三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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早いもので、新年ももう八日目である。
お正月はあっというまに通りすぎてしまった、という感じだが、年頭に頂戴した賀状に、
──乱歩関連事業アドバイザーとしてのご活躍に、大いに期待しています。
と添え書きされたものがあった。
北関東にお住まいのかたからの賀状である。
乱歩ファンのかたである。
北関東の乱歩ファンのあいだにまで、名張市乱歩関連事業アドバイザーの令名は鳴り響いているのである。
うわーっはっはっは。
なかなかたいしたものであろうが。
とはいうものの、残念ながら、ご期待にはとても添えそうにない。
もちろん、添いたいとは思う。
しかし、しょせんアドバイザーなのである。
なんらかの権限を与えられている、というわけでは、まったくない。
それゆえ、乱歩関連事業に存分に腕をふるう、なんてことは、まるでできない。
それにだいたい、名張市の乱歩関連事業なんてのは、おれにはどうだっていいことである。
たまたま乱歩関連事業アドバイザーという肩書をたまわりはしたけれど、おれの念願はただひとつ、名張市立図書館にもう少ししっかりしてもらいたい、ということだけなのである。
もちろん、しょせんアドバイザーなんだから、名張市立図書館で存分に腕をふるえる、というわけではまったくない。
名張市立図書館が乱歩にかんしてなにをやればいいのか、ということを、おれは重々承知しているつもりであるから、ふるう腕ならいくらでもあるわけだが、残念ながら、遺憾ながら、アドバイスすることしかできない。
だからアドバイスしてるわけなんだけど、名張市立図書館の現状は、かなりひどい。
ひとことでいえば、きわめて重症である。
いまさら驚きもせんけれど、乱歩にかんしてなにをやればいいのか、まるでわかっていない。
不覚にも落涙しそうになるほど、なんにもわかっていない。
そこで、先日から記しているとおり、渾身のアドバイスを展開しているわけなのじゃが、あしたのためにそのいち、みたいなアドバイスがこれじゃ。
乱歩関連資料を収集する、っつーのなら、乱歩関連資料、っつーのはいったいどんなものなのか、どんな資料を集めればいいのか、そのあたり、ちゃんと考えて、ちゃんと決めようね。
乱歩関連資料を収集するのであれば、どんな資料が収集対象になるのか、それを定義するのはあたりまえのことである。
そんなあたりまえのことができておらんのだから、あたりまえのことをさっさとやれ、とアドバイスするのは、これまたあたりまえのことである。
で、あしたのためにそのに、みたいなのがこれじゃ。
収集した資料をどう活用するのか、それを念頭において考えてみると、乱歩関連資料としてなにを集めればいいのかが、よくわかってくるかもしれないね。
これもまあ、あたりまえのことである。
活用をみすえた収集、といったものが望まれるのは当然のことである。
収集そのものが自己目的化してしまって、資料の活用についてはまったく考えておりません、なんてことでは困るわけなのである。
しかし、さらに困ったことがあった。
最近になって気がついたことなのであるが、どうして乱歩関連資料を収集しているのか、という肝心かなめのことさえも、名張市立図書館にはよくわかっておらんようなのである。
つまり、そもそもの目的、というやつである。
目的がようわかっておらんのである。
じつに困った事態である。
なんかもう、いちばん根っこの問題が、ずーっとほったらかしにされてるわけである。
だから、あしたのためにそのさん、みたいなのがこれ。
どうして乱歩関連資料を収集しているのか、それをよーく考えてみようね。
どうして、というのは、どういった目的のもとに、ということである。
あしたのためにそのに、みたいなものと似たようなことだが、収集の目的があいまいなままでは、なにを収集するべきか、といったこともまたあいまいにならざるをえない。
いまから考えると、まず最初に、名張市立図書館はどういった目的のもとに乱歩関連資料を収集しているのか、どうして名張市民の税金で乱歩関連資料を収集しなければならないのか、そのあたりのことをよーく考えてみようね、とアドバイスするべきであったかもしれんのだが、なにしろアドバイザー初心者のこととて、あとから気がつくことも少なからずある。
むろん、アドバイスする相手が優秀であったならば、収集すべき乱歩関連資料を定義するためには、収集の目的、収集資料の活用方法、そういったものを明確にすることが必要である、といった事情にはすぐ気がつくはずなのであるが、そんなことはとても望めない。
これがアドバイザーのつらいところよ。
それにしても、これはもうほんと、なんだかとんでもない話なのである。
われらが名張市立図書館は、乱歩関連資料を収集いたします、とぶちあげておきながら、どういった目的のもとに、どういった基準にもとづいて、乱歩関連資料とやらを収集し、その資料をどんなふうに活用するのか、といったことをなーんにも考えておらんのである。
ありえねー、と思わず叫びそうになるけれど、それが名張市立図書館の実態なのである。
どうだ。
ひどいだろう。
信じられんくらいひどい話だろう。
アドバイザーも大変である。
信じられんついでにもうひとつ、信じられんような話を披露しておくと、名張市立図書館にはひとつの伝統がある。
どんな伝統か。
乱歩のことを知ろうとしない、という伝統である。
ふつうなら、そんなのは、それこそありえねーことである。
かりそめにも、乱歩関連資料を収集いたします、とぶちあげたのであれば、乱歩のことをよく知ろうと努めるのが本来である。
あたりまえのことである。
それをしなくてどうするよ、という話である。
それってどうよ、という話である。
詐欺。
ペテン。
いかさま。
なんと呼んでもいいのだけれど、なんにせよ、グルーポンでおせち売ってんじゃねーんだからよー、みたいな話なのであって、尋常なことではまったくない。
はっきりいって、異常なことである。
開館以来四十年にわたって乱歩関連資料を収集し、館内には乱歩コーナーを開設し、乱歩にかんする詳細な目録も三冊刊行しておりますが、名張市立図書館は乱歩のことをよく知りません。
こんなのは異常なことである。
赤の太字で強調しておこうか。
開館以来四十年にわたって乱歩関連資料を収集し、館内には乱歩コーナーを開設し、乱歩にかんする詳細な目録も三冊刊行しておりますが、名張市立図書館は乱歩のことをよく知りません。
うわーっはっはっは、うわーっはっはっは、うわーっはっはっは。
笑ってごまかしてる場合か。
これがまあ、名張市役所において乱歩関連事業に携わるほかのセクションだというのであればともかく、いやいや、ほかのセクションだってほんとはよくないんだけど、新年早々だからきょうは大目にみてやることにして、ほかのセクションだというのであればともかく、名張市立図書館というセクションにおいて、乱歩のことを知ろうとしない、というのはかなりまずい。
しかし、それが事実なのである。
名張市立図書館は乱歩のことを知ろうと努めてこなかった、というのは厳然たる事実なのである。
乱歩のことを知る、というのは、難しいことでもなんでもない。
乱歩作品を読みさえすれば、いくらだって知ることができる。
先日も記したとおり、名張市立図書館がオープンしたのは講談社から歿後第一次乱歩全集が配本されているときだったんだから、配本された小説を、評論を、随筆を、自伝を、と読み進んでゆくだけで、乱歩について知ることは、とりあえずできたはずである。
そのうえで、それこそ乱歩関連資料を収集し、それを読んでゆきさえすれば、収集資料の活用を方向づけることだって、いとも簡単にできていたはずなのである。
ところが、そういうことは、まったくなかったらしいんだなこれが。
なにも知ろうとせず、なにも考えようとせず、なにも決めようとせず、ただぼーっとぼーっとしているばっかりで、せいぜいがまあ、生誕百年が近づいたから乱歩の読書会でも開いてみるっぺ、といった程度のことを思いつくことしかできない。
どうだ。
ほんとにひどい話だろう。
だからおれは、読書会の講師を頼まれて、もう速攻で断ったわけな。
そもそもそんな読書会は必要ない、ということもあったし、それ以上に、乱歩関連資料を収集し、乱歩コーナーを開設しておきながら、乱歩生誕百年を控えて読書会ごときでお茶を濁すことしか思いつかないような程度のわるい図書館とは、頼まれたってかかり合いになんかなりたくねーや、とも思って、速攻で逃げたわけな。
つまりまあ、お役所ってのは、ほんとにいいところなのである。
一般的な感覚でいえば、全国でただひとつ、乱歩関連資料を収集しております、と宣言した図書館なんだから、乱歩のことをよく知ろうと努めるのは当然のことであろう。
ところが、実際には、そんなことに努めなくたって全然OK、ぼーっとぼーっとしてるばかりでもいっさい支障はないと来てるんだから、お役所ってのはほんとにいいところなのである。
無能であり、怠慢であり、無責任であり、不勉強であることが、むしろ常態である世界。
有能であったり、勤勉であったりすることが、むしろ抑制されてしまう世界。
横一線に並んで、無責任や不勉強を貫くことが、むしろ称揚されてしまう世界。
それがお役所という世界なのである。
名張市立図書館における乱歩関連資料の収集も、そういった異常な世界で、内容空疎なお題目としてむなしく存在しているだけのものだったのである。
そのお題目の根拠は、いったいなんであったか。
名張市内に、乱歩記念館とか、乱歩文学館とか、そんなものを建設してみたいっぺ、といううわごとみたいなものでしかなかった。
もう四十年も昔、名張市立図書館が開設された当時のうわごとみたいな思いつきが、ただのいちども検証されることなく、見直されることなく、きわめて無批判に継承されて、現在にいたっているのである。
だーからもうねー、アドバイザーってほーんと大変。
なんとも異常な世界の片隅で、乱歩がどうこういう以前に、ちゃんとすっぺやー、もう少しまじめに仕事しても罰はあたらんぞー、乱歩の仕事するっつーんなら乱歩を読まなくてどうするよー、とお役所のみなさんに呼びかけることがアドバイザーの役目ということになるわけで、あほらしいといえばこれほどあほらしいこともないのじゃが、おれはもちろんそうしたアドバイスもしておる。
2010年12月13日:アドバイザーは不安である > とにかく乱歩が書いたものをよーく読んでみようねと
こんなあたりまえのことをいちいちアドバイスしなきゃならんのだから、しかも、いくら渾身のアドバイスを展開してみたところで、のれんに腕押しのぬかに釘、馬の耳に念仏の蛙のつらに小便と来た日には、なんかもうほんとにね。
だからこれまで、やや勇み足気味ではあったものの、あしたのためにそのよん、みたいなアドバイスもしてみたのじゃが、なんだかなあ。
収集資料にもとづいて乱歩作品個々のデータをまとめていく、みたいなことを考えてみてはどうだろう。
あるいは、アドバイスというより、こんなことがいまだにできてないのはいったいどうしたことだ、というしかないのだが、あしたのためにそのご、みたいなのがこれ。
インターネットを活用して、データベースを発信するのはどうだろう。
どうだろう、っつーよりもな、データベースをインターネットで発信するなんて、いまやごくごくあたりまえのことなのではあるが、名張市立図書館の現状に照らして考えると、これがもう夢のまた夢、という気がしてくるわけなのよね。
とにかく、なにをするにしても、乱歩を知る、乱歩を読む、そこからスタートするわけなんじゃが、それをせんというのであれば、なにをどうアドバイスしてみたところで、なにがどうなるものでもないんだじょ。
うわーっはっはっは。
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