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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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 ここらで煙が出るコロナであろうな
 
 名張市役所のレベルは無視して、松竹梅の松コースで行くことにした。それは市民の意にも添うことであろう、と思われた。おれの知ってるかぎり、名張市民が乱歩にかんして漠然と考えてるのは、乱歩の名前を利用して名張を有名にしたい、ということである。乱歩作品は読んだことないけど、乱歩っていうのは有名な作家なんだから、なんとかそれにあやかることができるのではないか、とか虫のいいことを考えてるわけな。小つまらぬ自己顕示欲のレベルの話である。なら、具体的にどうすればいいと思うの? と尋ねてやると、乱歩記念館をつくろう、みたいな答えしか返ってこない。なんの考えもない。とはいうものの、市民のぼーっとした願望も理解できないではない。だから、どうせ目録をつくるのであれば、それも市民の税金でつくるわけなんだから、多少なりとも名張の名を揚げることに役立つものをつくらなくちゃな、ということになる。
 
 それに、市民生活にまったく関係のない事業に市民の税金を使うことに、おれはなんとなく負い目を感じる。そんな必要はまったくないんだけど、とにかく感じてしまう。だから、一冊目の目録で甲子園初出場初優勝みたいなあたりまでもっていければ、市民生活にまったく無関係なことに税金をつかったことにかんして、市民のダイレクトな納得が得られるのではないか、とか虫のいいことを考えた。甲子園とはどういうことか。日本推理作家協会賞である。あの賞には評論その他の部門というのがあって、一冊目の目録はその部門で受賞できるであろうとおれは皮算用していた。そういった下馬評がちらっと伝えられてきたりもしたのだが、実際にはノミネートすらされないという意想外の結果に終わってしまった。公立図書館なんて授賞対象ではなかったのかもしれんが、とにかく甲子園初出場初優勝どころか、監督の不始末かなんかで地方大会にも出られなかったかわいそうな野球部、みたいなことになってしまった。
 
 とはいえ、目録そのものは評判がよかった。手前みそになるが、関係方面から高い評価をいただくことができた。これひとえに、名張市役所のレベルなどというものを無視して、最上級の松コースを志向したたまものである。松竹梅、というたとえは理解していただきにくいかもしれないけれど、たとえば、ここにお米があるとして、そのお米をどうやって炊くか、という話である。おなじお米でも、炊きかたによって味が全然ちがってくる。その炊きかたに、松、竹、梅、というみっつのコースがあって、松コースとなると使用する水や釜を吟味しなければならず、お米のとぎかたや火加減にも細心の注意が必要で、要するに手間がかかっていろいろ面倒ではあるのだが、炊けたご飯はとてもおいしい、という話である。たとえがますますややこしくなったような気もするが、要するにそういうことである。収集資料という素材から、どれだけ上質なサービスを提供できるか、という問題なのである。
 
 ところで、おれのみるところ、どうもお役所のみなさんは、サービス対象を念頭におく、ということが苦手らしい。お役所のみなさんというのは、いうまでもなく公務員であり、公僕であり、すなわちパブリックサーバントである。そのサーバントがサービスの提供対象を念頭におかないというのは、よく考えてみれば、というか考えてみなくたってかなりおかしなことなのであるが、お役所のみなさんはそのあたり、屁とも思っていないような感じがする。なんかもう、自分たちの勝手な都合をろくに説明もせず市民に押しつけてるだけ、という感じがする。たとえば、名張市における一連のごみ問題はどうよ、みたいなところに話がそれるとどこまでそれてしまうかわかんないし、それにそもそもまだテロではないんだからここまでとしておくけど、煎じつめれば単純な話で、収集資料というお米をいかにおいしく炊いて提供するか、という話なのである。ところが名張市立図書館の場合は、え? お米って炊くものなんですか? みたいな感じだったわけな。全国でただひとつ、乱歩の関連資料を収集している公共図書館として、いったいどんなサービスを提供すればいいのか、なんてことは考えてもみない。
 
 その点、おれはもともとサービスを受ける側の人間だから、どんなサービスが望ましいかなんてことは、いちいち考えなくてもすぐにわかる。つまり、いきなり松竹梅の松コースでご飯を炊くことができるわけな。とはいえ、一冊の目録で松コースのサービスを提供するとなると、調査や編纂なんかの作業は半端ではない。なんかもう大変だったなほんと。なにしろおれなんて、名張市立図書館の嘱託になった時点では、目録をつくった経験などもちろん皆無で、書誌学の知識は完全にゼロである。雑誌の巻号数の意味さえ知らなかったほどである。のみならず、探偵小説にさして興味があるわけでもなかったし、古書への関心はまったくなかった。だからいわゆる泥縄ってやつで、その道の専門家の人からお近づきをいただいていろんなことを教えてもらったり、むろん自分でも死ぬほどお勉強をしたわけだけど、それでもまあ、なんとかなるだろうとは思っておった。乱歩がついてる、と思ってたからである。どういうことかというと、乱歩は一面では書誌学者でもあって、さまざまな目録を編んでたわけな。そのなかには自分の作品や関連文献の目録もあったから、悩むことや迷うことがあったら、乱歩ならどうしたか、ということを考えてみれば、乱歩の残した文章や目録が、おのずと答えを出してくれる。思案に暮れたら乱歩に立ち返り、乱歩ならこうしただろうな、という線を出してくればいいだけの話だったのである。
 
 さて、話の流れをぶった切って現在ただいまの話をすると、いまここ、ということになる。まさにここ、ようやくここまでたどり着いた。昨年の秋以来、名張市役所のみなさんに、乱歩のことを真剣にまじめに一生懸命に考えていただいておる。ひとことでいえば、名張市立図書館はなにをすればいいのか、それを考えていただいておるわけであるが、直近の話し合いの場において、おれは名張市役所のみなさんに、乱歩に立ち返って考えることが必要である、乱歩は自作目録も残してくれてるし、『貼雑年譜』なんかもおおいに参考になるしな、とアドバイスしておいた。いうまでもないことだが、現在ただいま、名張市立図書館には乱歩にかんしてなんの考えもない。資料収集の方針すらない。ましてや、収集資料をどう活用するか、なんてことにはまるで考えがおよんでいない。しかし、それではだめだろうが、という一点においては、いやいや、じつはこのあたりいささか不安ではあるのだが、名張市役所のみなさんと見解の一致をみているはずである。つまり、こんなことほざいてちゃだめだろーが、ということである。
 
中 相作 さま
    
このたびは「市長への手紙」をお寄せいただき、ありがとうございました。
 
名張市立図書館が所蔵する江戸川乱歩関連資料を活用するための具体的な方針につきましては、現在のところございませんが、今後、図書館活動の一環として、江戸川乱歩に関連する図書や雑誌などの資料を、収集・保存に努めてまいりたいと考えています。
 
今後とも、貴重なご意見・ご提案をお寄せいただきますようお願いします。
 
平成20年10月 9日
 
 名張市長 亀井利克
 
 なあ、名張市役所のみなさんや。こんなことほざいてちゃだめだよな。だから、こんなことじゃだめだ、という一点において、おれは名張市役所のみなさんと見解の一致をみていると思うんだけど、もしもかりにみなさんが、収集資料を活用する必要なんかない、なんてことおっしゃるのであれば、それはちょっとえらいことだぞ。なにしろ名張市は、すでに三冊も目録を発行しておる。つまり、名張市の最高議決機関である市議会において、目録の発行は必要である、ってんで予算が認められたわけなのな。それがどうよ。資料なんて活用する必要がない、みたいなことになったら、あの目録は必要ありませんでした、税金の無駄づかいでした、ってことになってしまうではないか。名張市役所のみなさんは、市議会の議決を否定するつもりなわけ? それはまあ、なにしろ名張市議会である。けったいな議決はいっぱいある。しかし、市職員の立場で市議会の議決を正面から否定するってのは、ポケットに辞表をしのばせてからじゃないとできないことじゃねーの?
 
 話がそれてしまった。要するに、いまのままじゃだめだから、いったいなにをどうすればいいのかな、という話である。いまさらことあらためて考えるようなことではないんだけど、ずっと考えてきてもらったわけである。つまり、いまみえている花の話からはじめて、枝から幹、そして根っこというぐあいに話を進めてきた。眼にみえる目録の話からはじめて、そうした目録が存在するためには、どうしたって根っこになる方針が必要である、その方針はいったいどうよ、といったところまで、ようようたどり着くことができた。しかし、さすがに、そろそろ、ここらで煙が出るコロナ、みたいなことにはなってきた。というか、乱歩の自作目録や『貼雑年譜』なんかの話題を出したとき、おれにはもう、はっきりと煙がみえてしまった。煙ってのはなにかというと、これは名張まちなか再生委員会にかんして記したことで、乱歩には直接は関係ないのだが、今回の場合にもまんまあてはまるはずである。
 
 
 それにしても、まさか名張市が名張まちなか再生委員会から引いてしまう、などという驚天動地の結末が待っていようとは、このエントリの時点では夢にも思っておらなんだなあ、みたいなことはいいとして、煙にかんする部分を引用しておく。
 
 ところが、因果なことに、なにしろ名張市なのである。なんつったって、名張市だもの。庁舎あげて統一見解を打ち出すことまではできたとしても、その先が難しい。統一見解にもとづいてなにをすればいいのか、なにをどうすれば名張まちなか再生委員会を解散に追い込めるのか、それがわからない。なんせ、頭をつかわなければならんのだからな。そんなこと、名張市にはできない相談なのである。ちょっとでも頭をつかおうとしたとたん、おつむがたちまちオーバーヒートして、ひゅーん、ひゅーん、とおつむのどっかから切なそうな音が聞こえてきたかと思うと、耳の穴からもくもくと黒い煙が出てくる。えらいもので、庁内会議でちょっとした難問にぶち当たり、出席者が無謀にもいっせいにものを考えはじめたりするやいなや、あっちこっちでひゅーん、ひゅーんと切なげな音がすると同時に、耳から出てきた黒い煙がたちまち室内に充満して、スプリンクラーが勢いよく散水をはじめてしまうってんだからたまらんよな。とにかく、庁舎一丸となってみたところで、ろくな知恵が浮かばんというのが現実なのである。
 
 なんかもう、その煙が、おれの眼にはありありとみえてしまったわけよ。むろん、煙が出ることは最初からわかっておった。しかし、せめて耳の穴からもくもく煙が出るところまでは、名張市役所のみなさんにちゃんと考えてもらわにゃならん問題なのである。むろん、当然、考えはおよばぬであろう。なにも考えられなくて、ただただ黒い煙に包まれてしまうばかりであろう。どーしよーもねーなーまったく、ということになるしかないわけなんだけど、だから、だからこそ、おれはお役所のみなさんに、あんたらが乱歩のことを考える場におれを立ち会わせてくれんかね、とお願いしておるわけなのである。名張市立図書館が乱歩をどうすればいいのか、それを真剣に考える場はどうしても必要である。しかし、いくら場だけ設けたって、そこに集まるのがお役所のみなさんではどうしようもない。乱歩作品をまともに読んだことがなく、乱歩がどういう作家だったのか、現在どのように受容されているのかを知ろうともせず、図書館は無料貸本屋だと信じて疑わないようなみなさんが何十人何百人と集まってみたところで、なんの役にも立たんわけな。わかるか? お役所のみなさん、おわかりか? これは、こちらからなにかを提案して、それをみなさんにご検討いたただく、などといった話ではまるでない。検討いたします、なんていうのはちゃんとした検討能力のある人間が口にすべきことばなのである。わかるか? 検討能力のない人間がなにを検討したところで、つまり、名張市役所のみなさんになにを考えていただいたって、そんなものはしょせん、
 
 ──ほんとにもう、お役所あたりのうすらばかがめいっぱいおよろしくないおつむで適当なこと勝手に決めてんじゃねーぞこのすっとこどっこい、いっぺん泣かしたろかこら、と思われてなりません。
 
 といったことにしかならんのである。このあたりの事情は名張市役所のみなさんにも自覚がおありだろうとは思うのだが、もしも自覚がないのだとしたら、それはかなりの重症だぞ。
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