忍者ブログ
三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
[918] [917] [916] [915] [914] [913] [912] [911] [910] [909] [908]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 三本柱の一本目は講演会である
 
 三重県のことは、とりあえず横においておこう。名張市の話題に戻る。さて、名張市は乱歩のことをどうすればいいのかな、ということを考えるうえで、手ごろなネタがあった。先日もごらんいただいたこれである。
 
名張市公式サイト:なぞがたりなばり委託事業募集要項(pdf)
 
 ここに、こんなことが書いてあった。
 
   
■対象事業
・ミステリと江戸川乱歩に関する講演を開催する事業
・江戸川乱歩生誕地名張市をPRする事業
・江戸川乱歩の作品や人物を広く市民に顕彰する事業
 
 要するに、名張市は乱歩にかんしてこんなことをやっていきたいと考えております、ということであろう。いうならば、名張市乱歩関連事業ビジョン、みたいな感じか。順にみてゆく。
 
 まず三本柱の一本目、講演会うんぬんの件。先日も記したとおり、名張市のミステリ講演会は二十年ほど前に決められた企画である。二十年前といえば、バブルこそはじけていたけれど、バブリーな余韻はいまだ漂っていたころである。名張市はその余韻のなかで、第一線で活躍するミステリ作家の講演会を毎年開催する、と決めたのである。高級ブランド商品をゲットして自治体としてのグレードアップを図ろう、と考えたのである。その判断の当否は問わない。しかし、なにしろ二十年前だからな。二十年前といまでは、世の中かなり変わっておろうが。この国がここまでがたがたになり、衰退し、気がつけば二等国、みたいなことになってるってことを、二十年前に予測していた日本人なんて、まーずおらんのではないか。
 
 名張市とてそうである。二十年前にはまだ人口増がつづいていて、市人口が七万人を突破しましたあッ、と浮かれ騒いだのがまさしく二十年前、平成2・1990年のことであった。隔世の感がある。うたた感慨を禁じえない。とにかく、二十年前には二十年前の価値判断基準があり、その基準にもとづいて判断したことを、二十年後にどうこうはいわない。しかし、二十年前の判断をそのまま無批判にひきずってるのは、あまりほめられたことではない。いまの価値判断基準に照らしてどうなのか、ミステリ講演会をそのまま継続していいものかどうか、そのあたりはいちどきちんと考えてみなければならんだろうな。
 
 そもそも、ミステリ講演会はだれのためのものなのか。ぶっちゃけていえば、名張市のためのものである。名張市という自治体がかっこつけるためのものである。スタートがそうであった。それはそれとして、ほんとにだれのためのものなのか、それをあらためて考えてみると、先日も記したとおり、名張市民のためのものではないな、という気がしてくる。これは単純に、名張市民のなかにミステリファンがどれくらい存在しているのか、という問題である。とにかくミステリが好きで、ミステリ作家の講演にはぜひ足を運びたい、と思っている市民は、ほぼゼロに等しいものと思われる。それとはやや異なるが、ミステリ作家のファン、というのもある。ミステリ作家の講演会ならだれが講師であっても参加する、ということはないけれど、好きなミステリ作家が来てくれたら喜んで駆けつける、という層である。さらに、知名度の高いミステリ作家が講師であれば、とくにその作家のファンではなくても、盛名につられて講演を聴きにいく、という市民もあるだろう。しかしいずれにしても、数としては微々たるものだと推測される。
 
 では、名張市外のミステリファンはどうか。これまでのミステリ講演会でも、講師を務める作家のファンが遠方から来てくれることはあった。ありがたいことである。かりにおれが、たとえば東京に住んでいて、だれかミステリ作家のファンだったとしても、その講演を聴くために名張みたいな片田舎に足を運ぼうとは、とても思わない。しかし、わざわざ名張に行ってやろうと考える奇特なファンは、確実に存在するのである。とはいえ、数は見込めないし、一回かぎりのことでもある。リピーターにはなってくれない。もっとも、3月21日の講演会では、これまでにも遠方から来てくれていたリピーターは三人あった。東京、大阪、愛媛の人である。三人とも乱歩ファンである。とくに講師のファンというわけではないけれど、乱歩が好きだし、土地にも馴染みができたから、年一回くらいは名張に行ってもいいかな、と思ってくれる人たちである。したがってミステリ講演会も、もう少し乱歩に照準をしぼったほうがいいのかもしれんな。いずれにせよ、名張市のミステリ講演会は、市民であろうとなかろうと、ミステリファンであろうとなかろうと、結局は乱歩ファンのためのものである、と考えるのが妥当なところだと思われる。
 
 とはいえ、講演会を継続的に実施するのは、じつは大変なことである。一発勝負の講演会なら、まだ楽である。メディアに露出することの多い講師なら、大入り満員も夢ではない。しかし、「ミステリと江戸川乱歩に関する講演」と限定して毎年開催、なんてことになると、まったく楽ではない。入場者数の多寡はべつにしても、いろいろな面で楽ではない。そんな楽ではないことを、あえて毎年つづけるべきなのかどうか。ミステリ講演会がほんとに必要なのかどうか。必要だとしても、いまのままでいいのかどうか。先日も記したとおり、講演会をぱっぱかぱっぱかばかみたいに丸投げする前に、そのあたりのことはお役所の内部でじっくり考えてみるべきであったな。おれはそう思うのだが、名張市役所のみなさんはどうお思い? それに来年、というか、平成22・2010年度には、講演会を民間委託しようとしてもだれも手をあげてくれない、ということになりそうなんだから、名張市役所の中の人もまあ、手前どもは絶対にものを考えないことにしております、とかそんな堅苦しいこといってないで、ちっとはものも考えてみることにしような。
 
 というわけで、名張市がかかげる乱歩関連事業ビジョン三本柱の一本目、「ミステリと江戸川乱歩に関する講演を開催する事業」には、要検討、というはんこを押しておこう。ぺたっ。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:

Copyright NAKA Shosaku 2007-2012