三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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怪人19面相君のレベルでいいのかよ
いやー、いろいろと考えなければならんことが多くて困ったものだが、考えてばかりいても煮詰まってしまう。考えていることを少しずつ公開することにした。といったって、いまおれが考えてるのは名張市が乱歩をどうすればいいのかということなんだから、乱歩にも本にも図書館にも関心がないという諸兄姉には、面白くもなんともない内容となる。その点、あらかじめご寛恕をお願いしておきたい。
考えるというのは、やはり大切なことである。とくにものごとをはじめるときには、死ぬほど考えることが必要である。はじめにしっかり考えておかないと、いったいどうなってしまうのか。まちなか再生事業みたいなことになってしまうのである。あれはひどかったな。なんにも考えることなく事業がスタートしてしまった。第一歩目というべき名張まちなか再生プランを、なにも考えずただの思いつきでぱたぱたぱたっと決めてしまった。そのあげくどうなったのかというと、あのざまだったのである。目もあてられないことになってしまった。プランを策定するにあたって、つまり最初にものごとを考える時点で、たとえひとりでもいいから、まともにものを考えることのできる人間がいればよかったのだが、じつに残念なことであったな。
しかしまあ、過ぎたことはどうしようもない。まちなか再生事業にはさよならをしておいて、さて、なにから話をはじめるか。やっぱり、これか?
笑える。いまみても笑える。なんどでも笑える。やなせ宿として整備される以前の旧細川邸の裏に、名張川に面して、スフィンクスとピラミッドを描いたこんな看板が掲げられたことがあった。平成17・2005年の7月に撮影した写真である。記憶が薄れてしまった向きもおありだろうから、これはいったいなんだったのか、という点を確認しておく。同年8月1日付毎日新聞のウェブニュース「風景写真:名張?その日はエジプトにいたけど 市民団体が細川邸裏に設置 /三重」によれば、この看板は「写したくなる町名張をつくる会」という市民団体が、「からくりのまち名張」を全国発信するために設置したものである。
おれにはいまだによく理解できんのだが、この看板をケータイで写真に撮り、知人友人にメールで送信することによって、毎日新聞の記事によれば「エジプトに行ってきました!? いや、実はこれ名張やねん」なんて感じで名張を全国発信するのがねらいだったとのことである。はあ? というしかあるまい。スノーボードの国母和宏選手ふうにいえば、あぁ〜ん? あぁ〜ん? といったところか。それにしても、なぜエジプトなのか。「観光地として代表的なエジプトのピラミッドとスフィンクスの図柄を使った」というのだが、なんとも意味不明な話である。
しかし、この看板はおおいに受けた。おれのサイトでこの写真を全国発信したところ、閲覧者から大きな反響があった。しかもあの看板、名張市の市民公益活動実践事業のひとつとして掲出されたのであるから、税金が投入されているという点でも注目を集めた。名張市っていったい、なに考えてんの? という寸法である。むろん、官民双方の関係者がなにを考えていたのか、そんなことおれにはさっぱりわからないのだが、あの看板がまともな感覚をもった人間にかなりの衝撃を与えたらしいことはたしかで、げんに去年の秋に上京したときも、まだ話題にしてくれる人があったほどである。
看板が設置されたとき、なにしろ思いも寄らない上ネタがいきなり飛びこんできたものだから、おれはすっかりうれしくなった。看板のことをサイトでさんざっぱらおちょくってやったところ、サイトの掲示板に三人の投稿者が登場した。当時のログは「エジプトの怪人たち」というタイトルで保存してある。
名張人外境:人外境だより > エジプトの怪人たち
その三人は、「新 怪人二十面相」「怪人22面相」「怪人19面相」と名乗っていた。三人あわせても、投稿数はごくわずか。すぐにおとなしくなってしまって、掲示板に姿をみせてくれることはなくなった。もとより正体はわからない。しかし順当に考えれば、写したくなる町名張をつくる会、とかいう団体の関係者だろう。だから、おれは名張市役所を訪れ、市民公益活動実践事業を担当していた生活環境部の部長さんに、ちょいとおねだりをした。当時の部長さんはその後えらいご出世で、いまや名張市の副市長さんでいらっしゃるのだが、その部長さんにおれは、写したくなる町名張をつくる会に質問したいことがありますゆえ、部長さんからお尋ねいただけないものかしら、とお願いした。質問はつぎの四点であった。
一)一連の投稿を行ったのは、写したくなる町名張をつくる会の会員および関係者であったのか、そうではなかったのか。
二)名張のまちにエジプトの絵やニューヨークの写真を掲げることに、いったいどんな効果や公益が期待できるのか、このさいだから説明をうけたまわりたい。
三)この事業によってどんな成果がもたらされたのか。
四)怪人二十面相を事業のシンボルキャラクターとして使用しつづければよかったのに、最初のエジプトの絵だけでひっこめてしまったのはなぜ?
部長さんを通じて、写したくなる町名張をつくる会の代表のかたから、回答を頂戴した。二点目から四点目までの質問は、いまは関係ないから省略して、一点目の回答だけを記しておくと、会員ではない、とのことであった。写したくなる町名張をつくる会が設置した看板をおちょくってやったことにいちゃもんをつけてきてくれたのだから、ふつうに考えればあの三人はその会の人間だということになるはずだが、そうではなかったということである。だから、あの三人がいったいだれであったのか、おれにはいまだにとんとわからない。
三人のなかでもとくに人目を引いたのは、怪人19面相と名乗る男であった。いやいや、男なんだか女なんだか、実際のところはそれすら不明なのだが、怪人19面相名義の投稿に「私は♂です」と書かれてあったから、それを信用するなら男だということになる。いずれにしても、ろくなやつではあるまい。遠いところからきゃんきゃん吠えたてるしか能のない、口先だけのヘタレであろう。しかし、そんな市民はそこらじゅうにごろっちゃらしている。いやいや、怪人19面相君がはたして名張市民なのかどうかさえ、ほんとのところは判然としない。しかしこの場合、常識的に考えれば、怪人19面相君はやはり名張市民であり、しかもあのエジプトの看板になんらかのかかわりをもっていた人間である、とみるのが妥当なところであろう。
そういえば、去年の8月に、こんなエントリを掲載した。
2009年08月20日:当確が出たのでござるの巻
こんなことを書いておいた。
ここで、懐かしの怪人19面相君に伝言である。19面相君、気をつけろよな。「勘違い馬鹿のお方」みたいな感じで2ちゃんねるの名張市政スレあたりに書き込みなんかしたら、それが君の投稿だっていうことは一発でばれてしまうからな。ま、せいぜい気をつけたまえよな。
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この伝言のせいかどうかは不明だが、このエントリを掲載したとたん、あたかもそれが契機であったかのごとく、毎度おなじみ2ちゃんねる名張市政スレにおいて、しばらくひっそりとなりをひそめてしまった投稿者があった。そんな記憶がたしかにあるのだが、もしかしたら気のせいかもしれない。ともあれ、怪人19面相君の正体は、おれにはいまだにわからない。まったく見当もつかないのだが、あえてプロファイリングを試みるとすれば、ざっとこんなことになるであろうか。
・名張市民である。
・男である。
・写したくなる町名張をつくる会の会員ではなかったが、会になんらかのかかわりはもっていたとみられる。
・少なくともエジプトの看板が設置された時点では、「からくりのまち名張」というコンセプトを全国発信しようと考えていたらしい。
・名張市に関係のある電子掲示板や個人のブログに投稿し、文意を理解しづらいところが少なからずあるたどたどしい日本語で、なにがしかの好戦的な主張を日常的に展開している可能性が高い。
・たぶん、口先だけの人間である。
・おそらく、心底ヘタレである。
・したがって、十中八九、人望はない。
ま、こういったところか。わずかこれだけの手がかりから人物を特定するのは、まるで雲をつかむような話である。しかし、怪人19面相君の正体なんて、じつはどうだってかまわない。ならばどうして、わざわざ怪人19面相君のことを話題にしたのかというと、名張市における乱歩ということを考える場合、じつはこの怪人19面相君こそが基準になるからである。それはなぜか。「エジプトの怪人たち」に残っているログにあるとおり、怪人19面相君は平成17・2005年の8月4日、こんなことを投稿してくれたのである。
そもそも江戸川乱歩みたいなものどうでもええねん。20面相のキャラで又スフインクスのナンチャッテ写真で公益活動を実践しているのだから貴様につべこべ言われる筋合いとちがうねん!
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乱歩にかんしていうならば、名張市内の官民双方、本音のところはこれなのである。乱歩みたいなものどうでもええねん、ということなのである。乱歩作品なんか読んだこともないし、乱歩という作家のことだってなにも知らない。しかし、乱歩が名張に生まれたことはたしかであり、乱歩はいまでも絶大な人気を誇っているのだから、そのネームバリューを利用して、自治体なり個人なりの自己顕示欲を満足させたりその他もろもろ、みずからの快につながることができればそれでいい。むろん、自腹を切る気などさらさらない。すべては税金でまかなってもらうんだもんね。といったあたりが、名張市における官民双方、乱歩にかんする腹を割った本音なのであるとおれは思う。だから名張市において乱歩を考える場合、そういったレベルが基準になるのである。げんにもうずーっとずーっと、そういうレベルのことが長くつづいてきたわけなのである。
だから、もういいかげんにしろよな、とおれはいいたい。1月8日に名張市に提出した「名張市の江戸川乱歩関連事業について」にも記したことだが──
名張市の江戸川乱歩関連事業について(PDF)
名張市の乱歩関連事業というのは、要するにこういうことであった。
名張市の乱歩関連事業を概観して痛感させられるのは、一貫した方針が存在していないという一事です。自治体としての施策に乱歩をどう位置づけ、どう扱ってゆくのか、そういったことが何も示されていません。正直なところをいってしまえば、江戸川乱歩というビッグネームを利用して名張市の知名度をアップさせたい、名張をPRしたいというのが行政の思惑でしょう。それはそれで、けっして悪いことでも恥ずかしいことでもありません。問題なのは、そこに何の方針もなく、どんな戦略も存在していないということです。
要するに、名張市の乱歩関連事業はすべて場当たり的な思いつきの産物でしかありません。じつに月並みで、名張だけの独自性など微塵もなく、どこにでも転がっているような事業の焼き直しにすぎません。しかし、それは当然のことだというべきでしょう。乱歩作品をまともに読んだことがなく、乱歩がどういう作家だったのか、現在どのように受容されているのかを知ろうともしない人間が、行政職員の職務として乱歩関連事業を企画立案してみたところで、場当たり的な思いつき以上のことができるはずはありません。
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お役所のみならず、市民サイドでも同様である。乱歩なんかどうでもええけど、乱歩の名前を利用して好きなことしたるねん、乱歩という一流ブランドでかっこつけたるねん、などといった怪人19面相君レベルの考えは、お役所にも市民にも共通しているとみるべきであろう。その端的なあらわれが、名張市における乱歩記念館構想というものだったのである。乱歩の名前を利用したハコモノをつくって、名張を有名にしたるねん、ということまでは思いつけても、その先のことがまったく考えられない。あたりまえである。乱歩作品を読んだこともなく、乱歩のことをろくに知りもしない人間が、さーあ乱歩記念館だ乱歩記念館だとめいっぱい声を張りあげてみたところで、そこから先に歩を踏み出すことなんてとてもできない相談である。ただの掛け声倒れに終わるしかない道理なのである。
だからここで、名張市は乱歩をどうすればいいのかということを考えるエントリ「乱歩のことを考える」の第一回においては、とにかく乱歩記念館などという世迷いごとを並べるのはもうやめとこうな、といったことを最初に決めておくべきだと思う、ということを提起しておきたい。以下は、またあした、あるいはそれ以降。
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