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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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 きのうのつづきな。
 
 平成17・2005年2月
 
 名張市が名張まちなか再生プランの素案を公表し、2月21日から3月22日までの期間でパブリックコメントを募集した。これがまあひどいプランであって、一読したおれは、まじーよこれ、と思わざるをえなかった。まじーよ、ではなくて、やべーよこれ、というべきか。ほんと、名張市やべーよ、と本気で思った。こんなでたらめなプランを策定して、いったいなにがしたいというのか。あったま腐っとるのか。
 
 結局、いっさい修正を加えることなく、名張市は素案をそのまま正式なプランとしてしまった。諸悪の根源、名張まちなか再生プランの誕生である。いまも名張市の公式サイトで読むことができる。
 
名張市公式サイト:名張まちなか再生プラン(pdf)
 
 乱歩のことからは離れるが、これがいかにでたらめなプランであったか、ここで確認しておく。なに、簡単なことである。プランに列挙されたプロジェクト、つまり、まちなか再生事業で実施されるべき事業のことであるが、そのプロジェクトがどの程度に実現されたのか、それをチェックするだけの話である。
 
 プランには、これだけのプロジェクトが記されていた。
 
   
歴史拠点の整備
 初瀬街道沿いの町並み修景整備事業
 歴史資料館の整備事業
 担い手の育成事業
 
水辺の整備
 まちなかを流れる簗瀬水路の整備事業
 ・水路整備のためのデザインガイドラインづくり
 ・城下川沿いの歩行者空間整備と町並み修景整備
 ・中町と城下川をつなぐひやわいの整備
 ・城下川沿いポケットパークの整備
 ・一の鳥居広場整備
 ・大手橋詰めの駐車場の開渠化
 ・初瀬街道沿いの環境整備
 ・リバーナと中町をつなぐ公園道路整備
 ・蛍のいる簗瀬水路と歩行者空間の整備
 ・暗渠の開渠化による親水空間整備
 名張川の存在が感じられる整備と子供や市民との交流促進事業
 ・エコロードの拡張
 ・子供が遊べる河川敷の整備
 ・名張川と親しむためのイベント開催
 ・空き家を活用したミニ水族館整備
 ・青空市の開催
 ・川の駅の整備
 ・まちなかを見下ろす展望台と散策路の再整備
 簗瀬水路と名張川を結びつける散策路整備事業
 ・まちなか散策ルートとサイン計画
 
交流拠点の整備
 新しい商業の拠点整備事業
 個性ある老舗を改修支援事業
 空き店舗を活用したパイロット事業
 空き店舗の提供システム
 
生活拠点の整備
 地区保健福祉センター(まちの保健室)整備事業
 町単位の福祉交流施設(小規模複合「夢づくり広場」)整備事業
 担い手の育成事業
 
歩行者空間の整備
 まちなかを散策するネットワーク整備事業
 
 もう感心してしまうよな。実現性なんて毛筋ほども考慮することなく、つれづれなるままに思い浮かんだ脳内妄想をただ並べてみました、というプランである。まともな見識と判断力がある人間なら、こんなプラン策定してしまって大丈夫か、と思うはずだし、策定のプロセスであまりのひどさに懸念を抱いた人間だっていなかったわけではないだろうが、なんの歯止めもかかることなく、名張まちなか再生プランは正式に決定されてしまったのである。
 
 つづいて、今年3月にまとめられた事後評価シート。
 
 
 国土交通省のまちづくり交付金を活用して、まちなか再生の旗のもと、どんな事業が実施されたのか。事後評価シートとやらから写してみる。
 
   
基幹事業
 既存建造物活用事業
 ・名張市旧細川邸やなせ宿
 高質空間形成施設
 ・太鼓門散策道整備
 ・名張駅西口公衆用トイレ整備
 ・城下川沿い道路修景整備
 地域生活基盤施設
 ・公共サイン(まちなか案内板・誘導板)整備
 
提案事業
 地域創造支援事業
 ・乱歩生誕地碑広場整備
 ・歴史・文化修景事業─まちなか資源調査─
 
 いちいち指摘するまでもあるまい。ビフォアとアフターが、まったくといっていいほど照合していない。まちなか再生事業の指針として名張まちなか再生プランを策定いたしましたが、それはまあそれとして、そんなプランにはこだわることなく、ごくごく適当にまちなか再生事業を実施してみました、みたいな印象である。プランには、税金の無駄づかいだと悪名の高い「地区保健福祉センター(まちの保健室)整備事業」と「町単位の福祉交流施設(小規模複合「夢づくり広場」)」も記されているが、こんなものは市の地域福祉計画かなんかに位置づけられているはずのもので、このプランに顔を出してくるのは筋違いというしかない。だから、事後評価シートには保健室も広場も出てこない。
 
 唯一の例外として、これはもう例外と呼ぶしかないことだと思われるのだが、プランに明記されていた「歴史資料館の整備事業」は、事後評価シートにある「名張市旧細川邸やなせ宿」として実現された、ということになっている。しかし、やなせ宿が歴史資料館か? という疑問は残る。いやいや、もはや疑問なんかではないであろう。無駄に立派な公衆便所つきの名張地区第二公民館。それがやなせ宿の実態なのである。
 
 名張まちなか再生プランから、歴史資料館に関する記述を引用する。
 
   
【2】 歴史資料館の整備事業(重要度:◎)
 名張のまちにひろがりとまとまりが感じられるように、北の名張藤堂家邸に対して南にもうひとつの歴史拠点を整備します。
 初瀬街道沿いの最もまとまりのある町並みの中にある細川邸を改修して歴史資料館とします。細川邸は円滑な賃貸契約が見込めるほか、平成16 年11月の芭蕉生誕360年祭において旧家の風情を活かした魅力的な歴史資料館になりうること、適切な企画によって集客力が期待できることなどが確認できたので、歴史資料館にふさわしい建築物と考えます。
 老朽化した部分を除却し、町屋の風情を大切にして母屋と蔵を改修します。また、来街する市民の便に配慮して、駐車場、公衆トイレと喫茶コーナーを設置します。歴史資料館の主用途は資料の展示ですが、多様な市民ニーズに応えるために物販や飲食などを含む複合的な利用も可能なものとします。なお、歴史資料館の管理運営は民間が担う公設民営方式とします。
 市民に何ども足を運んでもらえる歴史資料館とするために、江戸時代の名張城下絵図や江戸川乱歩など名張地区に関係の深い資料を常設展示するほか、市民が関われる利用方法を工夫します。たとえば、芭蕉生誕360年祭のからくりコンテストのようなイベントで展示した作品、市民文化祭や市の美術展の出品作、個人や文化サークルなどが作成した作品(例:能面、絵画)を展示したり、小波田地区の「子供狂言」などを招致したり、名張地区以外の市民も参加できる方法が考えられます。また、庭に面した風格ある和室を冠婚葬祭や茶会など、市民も利用できる方法を検討します。市民が関わることのできる場と機会を提供することによって、主催者としてあるいは参加者としてさまざまな市民の来館が期待できます。
 管理運営を担う民間組織には、リピーターが確保できるような企画運営能力をもつことが期待されます。歴史資料館の立ち上がり期には、地元組織やまちづくり協議会が企画展示や施設管理に協力して、円滑な歴史資料館の管理運営に取り組みます。
 
 どこが歴史資料館だよ、というしかない。こんなものは、ご近所から犬だの猫だのハムスターだの九官鳥だのオカメインコだのときに爬虫類だの両生類だの、そんな動物をかき集めてきて、さあ動物園をつくろう、といってるに等しい。こんないいかげんな歴史資料館構想を中心に据えたプランが、なんの歯止めもなしに素案のまま決定されてしまったというのは、ほんとに信じられないような話なのである。
 
 結局のところ、名張市はなにを考えていたのか。むろん、まともにものを考えることなどできないにしても、こうしてつらつら振り返ってみるに、名張市は少なくとも、歴史資料館のことなんか考えていなかった。まちなか再生なんてことも考えていなかった。ただまあ、なんとなく、ぼーっとぼーっと考えていたのは、細川邸を適当に改修して、特定の地域住民に提供すればそれでOK、といったことだったのではないか。いまとなってはそうとしか思えない。そうに決まっておるのである。どうだ。図星だろうがインチキ自治体。
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