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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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昨年2月、桝田医院第二病棟跡地に乱歩文学館とやらを建設するという気のふれたような話が、名張まちなか再生委員会によって本気で検討されていたころのことである。委員会の内部組織として乱歩関連施設整備事業検討委員会というのが発足した。第一回目の会合が開かれることになって、出席するよう要請を受けた。むろん当方、委員会のメンバーでもないし、委員会に協力する気などさらさらない。

どうして出席したのか。協力する気などさらさらないというまさにそのことを、きっちり伝えるためである。名張まちなか再生プランなどというインチキに荷担する気はないし、プランはすでに異常事態と呼ぶべき段階に立ちいたっている。明らかに行政の責任を追及すべき時期である。乱歩文学館がどうのこうのと、そんな脳天気なことほざいてる場合じゃねーだろ、みたいなことを発言した。

その場に、やや遅れて参加しのが、当時の教育次長であった。どういう話の流れであったのか、その会合のテーマとは直接なんのかかわりもないことであったのだが、名張市教育委員会の見解が、ゆくりなくも示された。つまり、名張市立図書館が収集した江戸川乱歩関連資料をどう活用するのか、当方は懇切丁寧にその筋道を示したつもりであるのだが、さあこれからどうする気? という問いかけに対する見解である。前教育長にお訊きして、またあらためてみんなで考えましょう、ということばとともに先送りされてしまった問題である。

このあたり、当時の教育次長にメールで送信した質問があるので、すでにインターネット上に公開しているものではあるのだが、転載しておく。

   
お世話になっております。単刀直入に申しあげます。以下に一点、質問を記します。ご多用中恐縮ですが、お答えをいただければ幸甚です。

名張市教育委員会は市立図書館の運営における江戸川乱歩の扱いについて、構想や方向性のようなものをおもちなのでしょうか。おもちなのであれば、それを示していただきたく思います。また、これからお考えになるというのであればその時期はいつごろなのか、構想や方向性は存在しないというのであればその旨をお知らせいただきたく思います。

私個人は、これまでに市立図書館が発行した江戸川乱歩リファレンスブックによって具体的に示しましたとおり、図書館が過去に収集した乱歩関連資料にもとづいて、全国を対象にしたサービスを提供することが望ましいと考えております。そのサービスはインターネットを活用して進めるべきであるとも愚考いたします。

しかるに、2月1日に開かれた名張まちなか再生委員会の第一回乱歩関連施設整備事業検討委員会において、貴職は私の考えを必ずしもそのまま受け容れるとはかぎらないという旨のご発言をなさいました。正確なところは事務局による録音を聴いてみなければわかりませんが、とにかく貴職は、私が示した方向性を100%受け容れるかそうでないか、それはこれから考えることであるとおっしゃったように記憶しております。

私にとってこれは驚くべきご発言で、名張まちなか再生プランには直接関係のないことですから委員会の席では何も申しあげませんでしたが、貴職にお訊きして確認したいことは少なからず存在いたします。しかし、いまはほかのことには触れません。ただひとつ、私の示したところをそのまま受け容れるにせよそうでないにせよ、名張市教育委員会が市立図書館の運営における乱歩の扱いをどのようにお考えなのか、あるいはお考えではないのか、その点に関して上記の一点をお訊きする次第です。

お答えはメールでお願いできればと思います。また、お答えは当方のサイトで公開させていただきたく思っておりますが、もしも差し支えがある場合は非公開といたしますので、その旨お知らせくださいますようお願いいたします。

年度末を迎えてお忙しいところ、勝手なお願いを申しあげて心苦しく思っております。よろしくお願い申しあげます。

2007/02/28

このあと、当時の教育次長には三回か四回、回答を催促するメールを送信したのだが、ついに返答はなかった。だから要するに、手塩にかけて育てた子供を殺されてしまったような気がしたのである。これがまた、むろん親の欲目ということもあるのであろうが、じつによくできた子供であった。

乱歩という作家に興味のない人には、どうでもいい話でしかないであろうが、うそだと思うなら、たとえば、なぞがたりなばりの講師として11月22日、名張市までお越しいただく芦辺拓さんに、名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブックはいかがでしたか、とお訊きしてみるがよい。おそらく、つくった人間の人間性にはおおいに問題があるけれど、三冊の目録そのものはそこそこである、といった程度のお墨付きはいただけるのではないか。というか、芦辺さんには、「遊歩人」という雑誌のアンケートで、平成15・2003年のベストワンに『江戸川乱歩著書目録』を推挙していただいたことさえあった。えらく光栄なことであった。それほどよくできた子供であったということである。

いやまあ、すでに殺されてしまったのだから、それはもうしかたがないとあきらめよう。しかし、だとしても、名張市教育委員会はどう考えているのか。市立図書館の運営に乱歩をどう位置づければいいと考えるのか。これまでに収集した資料をどんなふうに活用すればいいと考えるのか。それを明らかにしてくれなければ、死んだ子供だって浮かばれんではないか。はばかりながら当方、市立図書館の収集資料活用については、その方向性を残りなく示すために心血を注いだ。身銭だって切りまくった。これでまちがいないという確信もある。人がここまで、名張市のために身を挺したのである。それを否定するのはいいとしても、ならばどうすべきか、教育委員会がみずからなにも考えようとしないのはどういうことか。

しかしまあ、どういうことかも、こういうことかも、ないといえばないのである。それが名張市教育委員会なのである。だから、前教育次長には、10月29日の面談の場にぜひご参加いただきたかった。市長から頂戴した回答には、「今回は教育委員会として、ご意見・ご提案を承らせていただきます」とあるから、市長はもとより、前教育次長にもお出ましはいただけないようなのであるが、負け癖のついた犬みたいにこそこそ逃げ隠ればかりしておってもしかたあるまい。それはまあ、お役所の連中の第一義は責任回避にほかならず、異動してしまえば前任セクションにおける責任はすべて雲散霧消してしまう、というのがお役所の常識なのではあるけれど、そんな勝手な理屈は通用せんと思うぞ。

前教育次長には、なにも難しいことをお願いするわけではない。いつもどおりで結構なのである。平常心でいいのである。なにを尋ねられても、いっさい答えない。いつものように知らん顔をして、最初から最後まで黙りとおしていてくれればいいのである。その沈黙こそが、なによりも雄弁に、名張市教育委員会の無能と怠慢を証明してくれるのである。先日も記したとおり、面談の場に教育長と前教育次長の出席を要請したのは、その無能と怠慢を証明するためであって、他意はない。

したがって、教育委員会として意見や提案を承る、などといわれたって、当方にはそんな気はない。当方はあくまでも、名張市長から頂戴した要請にもとづいて、市長ご自身に意見提案を具申するつもりである。教育委員会には、つぎの一点について回答を用意していただければ、それでいい。

・名張市立図書館が四十年にわたって収集してきた江戸川乱歩関連資料にかんして、それを活用するための具体的な方針は、市教育委員会はいっさい考えていない。以上、相違ないか。

これにお答えいただければ、それで結構である。わざわざ時間を割いていただいて恐縮ではあるが、それで用済みである。相違があるとおっしゃるのであれば、むろんおはなしはいくらでも承るが、いいわけや先送りはごめんこうむる。したがって、10月29日の面談は、おそらく五分間ほどで終了するのではないか。五分間ほどで教育委員会を蹴散らして、そのあとはいよいよ、あらためて、市長との面談を要請することとなる。
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