三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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ちゃんと考えていただけてうれしいな
橘の件が片づいたので、もとの話題に戻ることにする。ここまでのところは、名張市役所のみなさんにもよくご理解いただけたものと思う。なにしろ、おれはごくあたりまえのことしかいってないんだからな。理不尽なことや不合理なことはいってない。無理難題をふっかけてるわけでもない。とにかくちゃんとしてくれ。名張市役所のみなさんにそうお願いしているだけである。ちゃんと考えてちゃんと決めよう。ちゃんと決めたことはちゃんと守ろう。そういってるだけである。名張小学校のよい子たちにだって、おれのいってることはちゃーんと理解してもらえるはずだぞ。なあ、名張市役所のみなさんや。とにかく、もうちょっとしっかりしような。ちゃんと考える。ちゃんと決める。ちゃんと守る。その程度のことはふつうにできるお役所になろうな。おれはそういってるだけである。
問題は、もとより乱歩まわりのことだけにはかぎらない。まちなか再生事業だってそうだったではないか。プラン策定の段階から、ちゃんと考える、ということがまずできてなかった。なにも考えることなく、ただの思いつきを寄せ集めただけでプランを決めてしまった。その時点で、事業の失敗は約束されていたようなものなのである。まちなか再生事業がらみでいえば、乱歩文学館構想だってそうだったよな。乱歩文学館を建設する、ということだけは思いつける。しかし、そのあとがつづかない。なにも考えられない。なにも決められない。うすらばかがおつむ煮つまらせていただけの話である。乱歩文学館なんてつくって、いったいなにをするのか。まったく考えられない。そんなものがどうして必要なのか。さっぱりわからない。じつにおめでたい話である。
名張市立図書館における乱歩関連資料の収集も、じつはおなじようなものであった。図書館つくるから乱歩関連資料を収集しよう、というところまでは思いつく。桝田医院第二病棟を寄贈されたから乱歩文学館を建設しよう、と思いつくのとおんなじである。ただまあ、資料収集なのだから、さすがに思いついただけで煮つまってしまう、ということにはならない。神田の古本屋へ行って、乱歩関係の古本を五貫目ほど、と注文すれば、それはもうほいほい売ってくれる。しかし、そこまでである。それで終了である。おつむが煮つまることさえない。収集資料の活用、などといったことにはまるで考えがおよばぬからである。なんのための資料収集か、なんてことはまったく考えようとしないのである。だから、読書会でお茶を濁してりゃそれでいいか、みたいな話になる。やらねばならぬことをなぜやらぬのか、と責められて、なにをやったらいいのかよくわかんない、などと泣きごとを並べてしまうことになるのである。
とにかく名張市役所のみなさんや、もうちょっとしっかりしてくれよな、とおれはつねづねお願いしておったのだが、ようやくしっかりしていただけることになった。ちゃんと考えていただけることになって、げんに現在ただいま、しっかり考えていただいている最中である。名張市立図書館における乱歩関連資料の活用について、それはもう煙が出るほど真剣に考えていただいているところなのである。開館の時点でちゃんと考えられ、ちゃんと決められているべきだったことを、四十年後にようやく、ちゃんと考えてちゃんと決めていただいておる真っ最中なのである。おれとしては、うれしいなったらうれしいな、てなもんよ。だが、しかし、と疑問にお思いの諸兄姉もあるかもしれない。名張市役所のみなさんがいくら真剣に考えてくれたところで、結局おつむ煮つまらせるだけの話なんじゃねーの? と。
いやいや、ご心配なく。その点にかんして抜かりはない。心配はご無用である。なにしろおれは、名張市役所のみなさんに、乱歩のことを真剣にまじめに一生懸命に考えていただくにあたって、できればおれをその場に立ち会わせてくれんかね、とお願いしているのである。名張市役所のみなさんにとって、じつに心強いことであろう。むろんおれは、おれの考えを押しつけるつもりはない。おれのいうとおりにしろ、と強要する気はない。そんなことするわけがないではないか。ただまあ、おれはものすごく心配なのね。乱歩のことを考えていただくのはとてもとってもありがたいことなんだけど、乱歩作品をまともに読んだことがなく、乱歩がどういう作家だったのか、現在どのように受容されているのかを知ろうともせず、図書館は無料貸本屋だと信じて疑わないような人たちに、いくら煙が出るまで考えていただいたところで、
──ほんとにもう、お役所あたりのうすらばかがめいっぱいおよろしくないおつむで適当なこと勝手に決めてんじゃねーぞこのすっとこどっこい、いっぺん泣かしたろかこら、と思われてなりません。
みたいなことになるのは火をみるよりも明らかなわけね。だからって、いつまでもこんなばかなことはいってらんないわけ。
中 相作 さま
このたびは「市長への手紙」をお寄せいただき、ありがとうございました。
名張市立図書館が所蔵する江戸川乱歩関連資料を活用するための具体的な方針につきましては、現在のところございませんが、今後、図書館活動の一環として、江戸川乱歩に関連する図書や雑誌などの資料を、収集・保存に努めてまいりたいと考えています。
今後とも、貴重なご意見・ご提案をお寄せいただきますようお願いします。
平成20年10月 9日
名張市長 亀井利克
いやいや、話が先に進みすぎたかもしれんな。「現在のところございません」ということになってる「江戸川乱歩関連資料を活用するための具体的な方針」について、これまでの歴史を振り返りつつ、市役所のみなさんのご検討に資する意味もこめて、次回に記すこととする。
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