忍者ブログ
三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
[720] [719] [718] [717] [716] [715] [714] [713] [712] [711] [710]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

きのう、名張市内でノンバーバル映画「鬼 The Oni」の撮影がおこなわれた。赤岩尾の鬼神のよみしたまうところであったのだろう、神に祝福されたような一日となった。とはいえ、神は神でも国津神、まつろうことのない荒ぶる神である。祝福の作法はいささか手荒かった。

撮影は午前7時30分、近鉄大阪線上本町駅のトイレでスタートした。改札に舞台を移し、8時50分発の鳥羽行き特急内でも撮影を継続。9時42分、名張駅で下車し、駅西口でもカメラがまわされた。ついで、三重交通の10時10分発敷津行きバスに乗車し、車中で撮影。10時30分、インフォーメーションセンター前で下車して、いよいよ滝之原の赤岩尾神社へ。

冬の赤岩尾神社は、死に絶えたような静寂に支配され、無彩色の冷たい大気に封じられる、とおとといのエントリに記したが、そんなものではなかった。赤岩尾神社は雪に包まれていた。朝、神社へ向かって伊賀広域農道に自動車を走らせたところ、雪が降りはじめた。路面に黒く残っていたわだちのあとが次第に白くなってゆく。長いのぼり坂でタイヤが空転し、視界も頭のなかもまっしろに鎖されてゆく感覚をおぼえた。これはだめかもしれんな、と思わざるをえなかった。白一色の景色を圧して、赤岩尾の鬼神の哄笑がたしかに聞こえるような気がした。

予想もしなかった雪は、鬼神の手荒い祝福であった。一時は撮影ができるのかどうかすら案じられたが、赤岩尾神社境内の小屋で大阪からのキャスト、スタッフと合流し、雪のことを尋ねると、おかげで明るくてクリアな絵が撮れる、とのことである。境内の雰囲気は、いやがうえにも神秘的である。ひと安心し、そういえば、と思い返した。さっき耳にした鬼神の哄笑には、悪意はみじんも感じられなかった。そう思い当たって、雪こそは鬼神からもたらされたなによりのプレゼントであり、鬼神が映画の撮影を祝福してくれているらしいと気がついた。

赤岩尾神社での撮影は午前11時30分に開始。午後1時からメディアの取材があった。

伊賀タウン情報YOU:たむらけんじさんらが映画撮影 地元住民も参加 名張市滝之原の赤岩尾神社で

午後1時30分、撮影を再開し、4時でいったん終了。上小波田の観阿弥顕彰碑公園、と昔は称していたのだが、いまは観阿弥ふるさと公園と呼ばれているスポットに移動して、4時30分に撮影スタート、とスケジュール表にはあるのだが、時間は予定よりやや押していたと記憶する。そしてこの能舞台で、思いがけないトラブルが発生した。致命的なトラブルである。しかし、絶望する必要などまるでない。滝之原から上小波田に場所が移ったとはいえ、赤岩尾の鬼神の通力は能舞台にもおよんでいるはずである。

ところで当方、映画の撮影に立ち会いはしたのだが、用事などなにもない。スタッフやキャスト、スペシャルサポーターがあわただしく動きまわる撮影現場の、あるいは「鬼 The Oni」という映画そのものの、いってみれば精神的支柱として存在していた次第である。だからトラブルが発生したときにこそ、精神的支柱としての器量が問われる。赤岩尾の鬼神の加護のもと、状況を的確に判断し、最善の道を決定し、素早く指示を出し、多少のロスタイムこそ出たものの、無事に撮影を続行することができた。

午後6時には能舞台での撮影を終えている予定だったが、時間はさらに押してしまった。赤岩尾神社でふたたび撮影が開始されたのは、午後8時ころではなかったか。かがり火のなかで撮影が進められ、予定を一時間半もオーバーして、終了したのは午後9時30分のことであった。かがり火が消され、照明が落とされて、赤岩尾神社が闇と静寂に包まれてゆく。鬼神に祝福された一日が終わった。

そんなこんなで、今回の映画撮影にあたっては、多くの名張市民にまきこまれていただいた。滝之原住民のみなさん、わけても上出、中出、下出の三地区で伝統を受け継いでいる獅子保存会のみなさん、名張能楽振興会のみなさん、それから名張市ならびに名張市教育委員会の職員のみなさん、ほかにもさまざまなご協力を頂戴したすべてのみなさんに、この場で深甚なる謝意を表しておく次第である。どなたにも赤岩尾の鬼神のとこしえの加護がもたらされることを祈りつつ。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
えべっさんまで待てないと騒ぐ人間をどうしましょう
 ●永遠のJガール様
 ご投稿ありがとうございます。
 編集その他の作業、よろしくお願いいたします。と申しますか、きのうの夜から、映画のラストに出てくるアルファベットによる人物紹介のことがちょっと気になっていて、脚本では、人物紹介のあとにエンドロールがはじまることになっておりますが、あの人物紹介はエンドロールのなかにきっちり含めてしまったほうが、ノンバーバルという規制にかんして、より安全なのではないかと思いあたりました。いかがなものでしょうか。
 それから、うちあげの件、暖かくなったらというのはまたずいぶんむごいおことばで、名張市内の関係者のなかには、春まで待てるか、という人間があるかもしれません。えべっさんまで待てない、とかいって騒ぎだすやつも出てくるかもしれません。私自身が大騒ぎしてしまうかもしれません。うちあげはうちあげとして、とりあえず反省会でも開くことにするか。
 今後ともよろしくお願いいたします。
人間豹 URL 2009/01/15(Thu)09:27:52 編集
打ち上げの件、了解しました
これから後処理業務がありまして(仮編集、音楽録音、本編集、MA)完成に向けて頑張っているところでございます。
暖かくなったあかつきに、名張でお世話になったかたがたに集まっていただきまして、ぜひ打ち上げをさせていただきたいと考えております。
よろしくお願い致します。
永遠のJガール(吉本の新矢) 2009/01/14(Wed)17:44:36 編集
撮影が終わったので今度はうちあげの段取りですが
 ●永遠のJガール様
 ご投稿ありがとうございます。
 ご丁寧にありがとうございました。
 撮影当日は朝から晩まで、ほんとにお疲れさまでした。私はあのあと、小春のトレーナー役を務めてもらったもと飼い主、あのおかあさんと小学生の女の子ふたりのトリオに拙宅に立ち寄ってもらい、夕ご飯をごちそうして、といったってろくな料理はなかったのですが、その日あったことを話題に盛りあがりました。小春のほうは、夕食もそこそこに、といった感じで、かなり疲れていたのか、早々に眠りについていたようです。
 当日のスペシャルサポーターのみなさんには、寒いなか長時間の待機に耐えていただいたことをはじめ、いろいろとお世話になったり、ご迷惑をおかけしたり、なんだかもうさんざんでしたが、みなさんそれぞれめいっぱいのことをしてくださって、終わりよければすべてよし、といった感じで撮影が終了したのは、なによりうれしくありがたいことでした。ま、名張市という地域社会のいわゆる底力、新矢さんにも少しはかいまみていただけたのではないかと思います。
 スペシャルサポーターが異口同音に、「名張の宣伝になれば」とおっしゃっていたということは、裏を返せば、名張は宣伝がへたである、ということでしょう。名張にはいろいろといい素材が転がっているのに、たとえば名張市がやってる情報発信とやらはいったいどうよ、市民の共有財産であるさまざまな素材の価値に気づきもせず、うわっつら、とおりいっぺん、つきなみ、すっとこどっこいなことばっかやりやがってまあ、といった認識が、名張市民のあいだに潜在しているということだと思います。さらに裏を返せば、ちゃんとした宣伝や情報発信を実現することができれば、市民がめいっぱい協力してくれる、ということでもあるのでしょうけれど、ま、名張市という自治体にはしょせん無理な話かもしれません。
 それはそれとして、「鬼 The Oni」のうちあげにはぜひ、万難を排してご参加いただきたいと思います。というか、たむらけんじさんの店でうちあげをやることは、はたして可能でしょうか。
 今後ともよろしくお願いいたします。
人間豹 URL 2009/01/14(Wed)11:35:17 編集
名張の皆様ありがとうございました
吉本の新矢です。
このたびの撮影では大雪が降り寒いなか、長時間にわたり、ご支援ご協力を賜りまして、ほんとうにありがとうございました。
感謝の言葉以外ありません。ロケ候補地はたくさんあるのでしょうが、今回名張の皆様がたが、どなたも一様に「名張の宣伝になれば」とおっしゃってくださり、手弁当でお手伝いくださいまして、胸が熱くなりました。想像以上にいい絵が撮れましたのはまさに名張の皆様のおかげでございます。出演者、スタッフ一同、心から御礼もうしあげます。
皆様、ありがとうございました。
中先生、ありがとうございました。
永遠のJガール(吉本の新矢) 2009/01/13(Tue)18:22:15 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:

Copyright NAKA Shosaku 2007-2012