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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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《NPO乱歩と名張》をつくろうかなと考えた理由は、江戸川乱歩という作家のことも、名張のまちのことも、これ以上、名張市にまかせておけないからである。それが実感されたからである。もうひとつ、個人の力には限界があるということもまた、さまざまな局面で実感させられた。もとより、NPOが無力ではないという保証はどこにもない。NPOの力だって、たかの知れたものでしかないだろう。だが、あとはNPOをつくってみるくらいしか、なすべきことを思いつかない。それが正直なところである。

とりあえず、11月3日に発足した《乱歩と名張》の設立趣意をお読みいただきたい。

   
《乱歩と名張》設立趣意

■経緯
江戸川乱歩は1894年、当時の名張町新町に生まれた。生後まもなく一家で転居したため、生涯のほとんどを名張と無縁に過ごしたが、晩年になって名張を訪れ、生家跡にも案内された。それが契機となり、市民の浄財によって生誕地碑が建立されたのは、名張市発足の翌年にあたる1955年のことである。乱歩は夫人とともに除幕式に臨み、その十年後に死去した。死去の四年後、1969年に講談社版江戸川乱歩全集の刊行が始まったのを機として、名張市に乱歩記念館の建設を目指す動きが起こった。市民有志が「乱歩記念館建設の会」を組織し、活動が進められたが、建設は実現しなかった。同年に開館された名張市立図書館が乱歩関連資料の収集を進めることで、記念館建設への望みがつながれることとなった。
名張市ではその後も、乱歩にちなんだ公的施設の構想が一再ならず浮上したが、そのたびに潰え去った。そのときどきの状況はどうあれ、単なる生地であるという稀薄な関係性のみを根拠として乱歩の記念館ないしは文学館を整備するのは、現在ではむしろ無謀な試みであると判断される。かりに乱歩の名を冠した施設整備を行うのであれば、規模においても運営においても、“大乱歩”の名にふさわしいものを目指すことが要請される。そうでなければ、名張市が乱歩を矮小化したという謗りは免れないであろう。また、旧乱歩邸の土地や家屋、乱歩の蔵書などは2002年、遺族から立教大学に一括して譲渡されており、乱歩にちなんだ本格的な記念館や文学館の建設は、いまや実質的に不可能であるとさえいえる。
■現況
私は1995年、名張市立図書館から請われて嘱託となったが、つねに主眼を置いてきたのは収集資料の活用であった。市立図書館が開設準備の段階から収集してきた乱歩関連資料は、全国の図書館にも類を見ない貴重な蔵書であり、その活用の道を探るのが図書館本来の責務であることは論をまたない。収集資料を体系化し、未収集の資料を調査して、1997年に『乱歩文献データブック』、1998年に『江戸川乱歩執筆年譜』、2003年に『江戸川乱歩著書目録』という三冊の目録を、名張市立図書館の「江戸川乱歩リファレンスブック」として発行した。
インターネットが普及した現在、これらの目録の内容は市立図書館のウェブサイトで閲覧できるようになっているのが当然であり、乱歩の著書、作品、関連文献などに関しても、市立図書館のサイトで検索が可能になっているのが本来であると考えられる。が、それは実現していない。私はこれまでに二度、そのための予算要求を行ったが、いずれも果たされなかった。一般の蔵書の検索が可能な公立図書館のサイトで、その図書館が独自に収集した資料の検索ができず、発行した目録のデータが閲覧できないのは、異常と呼んで差し支えない事態である。
乱歩が生まれた名張のまちに目を転じると、2004年度に策定された「名張まちなか再生プラン」の具体化が進められつつあるが、中心的課題と目されていた細川邸の活用については、具体的な決定を見ないまま来春の開館を迎えようとしている。これもまた異常な事態というしかない。私は2005年、プランの素案に対して提出したパブリックコメントで、名張市立図書館に展示されている乱歩の著書や遺品、図書館が寄贈を受けたミステリー関連図書を細川邸に集め、ミステリー専門図書館として整備するよう提案した。受け入れられることはなかったが、この提案自体はいまも有効であると判断する。
■展望
《NPO乱歩と名張》の目的のひとつは、名張市立図書館の収集資料やリファレンスブックにもとづきながら、乱歩作品と関連文献の資料調査をさらに重ね、乱歩に関する総合的データベース「名張市乱歩文学館」をインターネット上に構築することである。それは、長い期間にわたって乱歩関連資料を収集してきた名張市の責務であると同時に、乱歩の生誕地碑建立や記念館建設運動に尽力した先人の志を受け継ぎ、新たな形で再生させることでもある。が、名張市には遺憾ながらそうした認識は存在せず、収集資料の活用についても白紙の状態である。
また、名張のまちの再生を考える場合、江戸川乱歩という作家やミステリーという文芸ジャンルが、有効に活用されるべき素材であることは疑いを入れない。げんに、名張市には細川邸に「ミステリー文庫」を開設し、市立図書館に展示されている乱歩の遺品や著書を移管して公開する構想があると伝えられるが、それらの管理運営が専門知識を有さない組織に委ねられた場合、「ミステリー文庫」の整備が取り返しのつかない禍根を残すことにもなりかねない。《NPO乱歩と名張》は、細川邸に「なばり乱歩ライブラリー」を開設することを提案し、その管理運営を手がけることも目的のひとつとしている。
このほか《NPO乱歩と名張》は、書籍の出版、催事の開催などを通じ、乱歩が生まれた名張のまちの魅力を広く発信する活動も視野に入れている。《NPO乱歩と名張》が名張市や市立図書館などと連携し、「名張市乱歩文学館」と「なばり乱歩ライブラリー」とを基本にしたさまざまな事業を進めることは、名張市が掲げる“市民主体のまちづくり”の実践にほかならない。NPO結成を目指す組織として、乱歩生誕地碑の建立記念日にあたる11月3日、ここに《乱歩と名張》を設立する。

2007年11月3日

日付のあとには、《乱歩と名張》の代表である当方の名前が入る。

補足説明が必要かと思われる。あす以降、つづることにする。
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