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昭和七年(一九三二)
年齢:三十七歳→三十八歳、数え年三十九歳
住居:東京市外戸塚町源兵衛一七九番地
→東京市淀橋区戸塚町二丁目(地名変更)
□探偵小説四十年:細目□
二回目の休筆宣言【昭和七年度】
昭和七年度の主な出来事
大犯罪事件の年
二回目の休筆宣言
新潮社「新作探偵小説全集」
「文学時代」と佐左木俊郎
小太夫の「陰獣」劇
クイーンの最初の邦訳
文壇郷土誌
「ペンマンシップ」
横溝正史の首途を励ます会
一月一日(金)
□雑誌□「朝日」新年号(第四巻第一号)の奥付発行日。「盲獣」第九回が掲載された。
□雑誌□「キング」新年号(第八巻第一号)の奥付発行日。「鬼」第二回が掲載された。
□雑誌□「講談倶楽部」新年号(第二十二巻第一号)の奥付発行日。「恐怖王」第五回が掲載された。
□雑誌□「富士」新年特大号(第五巻第一号)の奥付発行日。「白髪鬼」第七回が掲載された。
一月八日(金)
□書籍□『江戸川乱歩全集 第三巻』の奥付発行日。
一月十日(日)
□雑誌□「探偵趣味」第九号の奥付発行日。「地獄風景」第八回が掲載された。
一月
《【一月】ハンス・リヒトの「古希臘風俗史」の英訳を読み、ひとしお古代ギリシアに興味を生ず。岩田準一君と旅すること多し、ローブの希英対訳本を大量に注文したのもこのころであった》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
一月
岩田準一と京都の醍醐寺を訪れた。[貼雑年譜]
二月一日(月)
□雑誌□「朝日」二月号(第四巻第二号)の奥付発行日。「盲獣」第十回が掲載された。
□雑誌□「キング」二月号(第八巻第二号)の奥付発行日。「鬼」第三回が掲載され、完結。
□雑誌□「講談倶楽部」二月特大号(第二十二巻第二号)の奥付発行日。「恐怖王」第六回が掲載された。
□雑誌□「富士」二月号(第五巻第二号)の奥付発行日。「白髪鬼」第八回が掲載された。
□雑誌□「文学時代」二月号(第四巻第二号)の奥付発行日。「妖虫」が掲載された。
二月六日(土)
午後五時から日本橋の三越本店前、三共ビル内のエンプレス食堂で開かれた「森下雨村氏の会」に出席。発起人に加わり、案内状の文章を記した。[探偵小説四十年 森下雨村の博文館退社/昭和29年1月]
《【二月】森下雨村氏昨年博文館を退社されたるにつき前途を激励する会を開く》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
二月八日(月)
□書籍□『江戸川乱歩全集 第十二巻』の奥付発行日。
二月十日(水)
□雑誌□「新青年」新春増刊号(第十三巻第三号)の奥付発行日。「トリックを超越して」が掲載された。
「編輯だより」でJ・M(水谷準)が、乱歩の「畢生の力作」が「本年の六月号あたり」に掲載されると予告した。[探偵小説四十年 中絶作「悪霊」/昭和29年6月、7月]
三月一日(火)
初の大西洋単独無着陸飛行に成功したチャールズ・リンドバーグの長男がニュージャージー州の邸宅から誘拐された。五月十二日になって邸宅近くで死体が発見された。
《【三月】米国にリンドバーグ大佐幼児誘拐事件起る》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
□雑誌□「朝日」三月号(第四巻第三号)の奥付発行日。「盲獣」第十一回が掲載され、完結。
□雑誌□「講談倶楽部」三月号(第二十二巻第三号)の奥付発行日。「恐怖王」第七回が掲載された。
□雑誌□「富士」三月号(第五巻第三号)の奥付発行日。「白髪鬼」第九回が掲載された。
三月五日(土)
□書籍□『江戸川乱歩集』の奥付発行日。平凡社から「現代大衆文学全集」続第二十巻として出版された。
三月七日(月)
玉の井のお歯黒どぶで三つのハトロン紙に包まれた男性の切断死体が発見された。翌日の新聞で報じられ、玉の井八つ切り事件などとして喧伝された。犯人は十月二十日に逮捕された。[龍田恵子:日本のバラバラ殺人(新潮社)/2000年10月]
《【三月】玉の井、八つ切り死体事件起る》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
三月十日(木)
□書籍□『江戸川乱歩全集 第九巻』の奥付発行日。
□雑誌□「探偵趣味」第十一号の奥付発行日。「地獄風景」第九回が掲載され、四月発行の『江戸が乱歩全集 第十一巻』で完結。
三月十六日(水)
前年からの連載小説がすべて終わったのを機に休筆することとし、通知の葉書を出した。[探偵小説四十年 二回目の休筆宣言/昭和29年1月、2月][貼雑年譜]
《【三月】昨年よりの連載小説の執筆を悉く終りたれば、当分休筆することにし、その挨拶ハガキを出す》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
三月二十日(日)
玉の井八つ切り事件の捜査本部に乱歩が犯人だとする投書が寄せられ、翌日の「読売新聞」でそれが報じられた。[探偵小説四十年 大犯罪事件の年/昭和29年1月]
三月
《【三月】家族を伴い京都、奈良、近江等を旅行す》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
四月一日(金)
□雑誌□「講談倶楽部」四月特大号(第二十二巻第四号)の奥付発行日。「恐怖王」第八回が掲載された。
□雑誌□「探偵小説」四月号(第二巻第四号)の奥付発行日。「騎士道的探偵小説」が掲載された。
「探偵小説」編集長の横溝正史から依頼され、クイーンの『オランダ靴の秘密』を原書で読んで感想を記したが、西洋の探偵小説に興味がなく、クイーンの文体にも馴染めなかった。[探偵小説四十年 クイーンの最初の邦訳/昭和29年3月]
□雑誌□「富士」四月号(第五巻第四号)の奥付発行日。「白髪鬼」第十回が掲載され、完結。
四月六日(水)
夜、新潮社で催された探偵作家の集まりに出席した。ほかに甲賀三郎、森下雨村、大下宇陀児、海野十三、水谷準、佐左木俊郎、橋本五郎、奥村某、横溝正史が参加。[「探偵クラブ」第一号口絵写真/昭和7年4月]
四月十日(日)
□書籍□『江戸川乱歩全集 第十一巻』の奥付発行日。「地獄風景」「火縄銃」が収録された。
四月十三日(水)
□雑誌□「探偵クラブ」第一号の奥付発行日。「巡り来し長篇時代」が掲載された。
四月二十日(水)
「探偵小説十年」を脱稿した。[初出末尾]
四月
《【四月】新潮社、書下し探偵小説全集の刊行を発表す》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
《【四月】大阪の探偵雑誌「猟奇」五月号限り廃刊す》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
五月一日(日)
□雑誌□「講談倶楽部」五月号(第二十二巻第五号)の奥付発行日。「恐怖王」第九回が掲載され、完結。
五月十日(火)
□書籍□『江戸川乱歩全集 第十三巻』の奥付発行日。「探偵小説十年」が収録された。
五月十五日(日)
海軍の青年将校を中心にした反乱事件が発生し、首相官邸に乱入した武装将校によって犬養毅首相が暗殺された。
《【五月】(五・一五事件起り、犬養首相射殺さる)》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
五月二十一日(土)
□雑誌□「探偵クラブ」第二号の奥付発行日。「大下君の長篇小説」が掲載され た。
六月一日(水)
□雑誌□「新青年」六月号(第十三巻第七号)の奥付発行日。「編輯だより」でJ・M(水谷準)が、先に予告した乱歩の長篇は「構想の準備中」と告知した。[探偵小説四十年 中絶作「悪霊」/昭和29年6月、7月]
六月七日(火)
夕刻、玉子が腹膜炎で死去した。[貼雑年譜]
《【六月】七日、妹、玉子死亡。算え年十七歳。自宅にて告別式。十二日三重県津市浄明院にて葬儀》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
六月十日(金)
午後三時から自宅で玉子の告別式を営む。[貼雑年譜]
六月十二日(日)
午後二時から三重県津市の浄明院で玉子の埋葬式を営み、夜、東京に帰った。[貼雑年譜]
七月
《【七月】「探偵小説」誌、八月号限り廃刊》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
横溝正史によれば、森下雨村が博文館を退社したあと、専務から「探偵小説」の廃刊を告げられたため、みずからも退社することを決意し、自分の好きな小説を紹介しておこうと、四月号からクイーン「阿蘭陀靴の秘密」を連載したほか、六月号にメイスン「矢の家」、七月号にベントリー「生ける死美人(トレント最後の事件)」、八月号にミルン「赤屋敷殺人事件」を掲載した。《それからまもなく乱歩さんに会うと、あんな面白いものがあるなら、なぜもっとはやく紹介しなかったのだと、叱られたのを憶えている》。[横溝正史:私の推理小説雑感/昭和47年6月]
このころ
《【七・八両月】単身にて東北旅行。十和田湖をはじめ東日本の湖水を全部見て廻る。南部恐山にて打切りとし引返す》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
このころ
夏ごろ、新宿のレストラン白十字で開かれた新潮社「新作探偵小説全集」の打ち合わせに出席。森下雨村、甲賀三郎、大下宇陀児、横溝正史、水谷準、橋本五郎らが顔を揃えた。執筆は断ったが、代作でいいとの妥協案が出されたため、博文館にいた岡戸武平に依頼した。[探偵小説四十年 新潮社「新作探偵小説全集」/昭和29年2月]
八月一日(月)
□雑誌□「新青年」八月号(第十三巻第九号)の奥付発行日。「上等馬車に乗って」が掲載された。
八月十一日(木)
□新聞□「時事新報」の連載「文壇郷土誌」で探偵文壇が扱われ、十五日まで五回にわたって掲載された。[探偵小説四十年 文壇郷土誌/昭和29年3月、4月]
このころか
□新聞□「東京日日新聞報」の連載「ペンマンシップ」で探偵作家が扱われ、五回にわたって掲載された。[探偵小説四十年 「ペンマンシップ」/昭和29年3月、4月]
九月一日(木)
□新聞□「読売新聞」に「欧米の本格型 甲賀三郎君」が掲載された。
九月十五日(木)
日満議定書が調印され、日本が満州を独立国として承認。
《【九月】(満州国承認)》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
十月一日(土)
東京市が隣接する五郡八十二町村を合併し、世界第二の都市となる。
《【十月】大東京市となる。随って住所「緑館」も市外戸塚源兵衛より淀橋区戸塚町二丁目と改称さる》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
十月六日(木)
東京市大森区の川崎第百銀行大森支店で現金強奪事件が発生した。
《【十月】大森、銀行ギャング事件起る》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
十月八日(土)
午後七時から日比谷の山水楼で開かれた松野一夫帰朝歓迎会に出席。探偵作家による大森ギャング事件の座談会に切り替えられ、翌日の「報知新聞」に掲載された。顔ぶれは海野十三、大下宇陀児、甲賀三郎、延原謙、橋本五郎、久山秀子、森下雨村、水谷準、横溝正史。[探偵小説四十年 大犯罪事件の年/昭和29年1月]
十一月一日(火)
□雑誌□「新青年」十一月号(第十三巻第十三号)の奥付発行日。「編輯だより」でJ・M(水谷準)が、翌年、乱歩の「大探偵小説」が寄せられることになったと予告した。[探偵小説四十年 中絶作「悪霊」/昭和29年6月、7月]
十一月十二日(土)
赤坂の幸楽で開かれた「横溝正史君の会」に出席。博文館を退社した横溝正史を激励する言葉を述べた。[探偵小説四十年 横溝正史の首途を励ます会/昭和29年9月]
十一月二十二日(火)
□書籍□『蠢く触手』の奥付発行日。新潮社から「新作探偵小説全集」第一巻として出版された。
十二月十一日(日)
新橋演舞場で新興座公演が開幕し、上演四作品のひとつとして「陰獣」がとりあげられた。脚色は小納戸容、演出は早瀬亘。市川小太夫が寒川、藤間林太郎が本田、石山健二郎が小山田、特別加入の梅野井秀男が静子を演じた。[探偵小説四十年 小太夫の「陰獣」劇/昭和29年2月][貼雑年譜]
《【十二月】「陰獣」市川小太夫により脚色、同一座にて新橋演舞場に上演さる》[探偵小説四十年 昭和七年度の主な出来事/昭和29年1月]
十二月
神田須田町のアメリカンベーカリーで開かれた精神分析研究会の会合に出席した。[探偵小説四十年 精神分析研究会/昭和29年4月]
[2012年8月5日]