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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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そんなこんなの状況なのである。ひとことでいってしまえば、とても不謹慎なことをいうようであるけれど、細川邸を整備して開設される「やなせ宿」なる施設は、誰からも望まれることなく生まれてくる赤子のようなものなのである。改修工事がまだ終わってもいない段階で、名張まちなか再生委員会も名張市も、やなせ宿という子供をもてあまして困惑している、というのが正直なところであろうと推測される。

毎日新聞の2月6日付記事にあったごとく、名張市はやなせ宿に「観光情報の発信や交流スペースを設置するとしている」としているらしい。なさけないことに、この期におよんでまだこんなことしかいえないのである。もともとが、観光交流施設を整備する名目で国土交通省のまちづくり交付金をぶんどってくるという話である。観光情報の発信だの交流スペースの設置だの、それくらいのことは誰にだっていえるだろう。しかし具体的なことは、おそらく何ひとつ決まっていないのではないか。

それに観光情報の発信ということでいえば、たとえば名張市観光協会がすでに手がけているではないか。似たようなことをあと追いしてもたいして意味はあるまい。むろん、これまでになかった視点や発想や手法にもとづいて、斬新で有効な情報発信とやらを進めることは可能だろう。だが、名張まちなか再生委員会に、あるいはまちなか運営協議会でもいいけれど、あの委員会や協議会にそんな気のきいたことができるのかどうか。これまでの経過をみるかぎり、外部からもたらされた意見や提言をいっさい受信しようとせず、細川邸にかんして自分たちが有している情報を外部にいっさい発信しようとしなかったのが、あの名張まちなか再生委員会なのである。情報がどうの受発信がこうのといえる立場か。ちゃんちゃらおかしい。ちゃらいこと口走ってんじゃねーぞ唐変木。

ともあれ、不幸な星のもとに生を享けた赤ん坊に無慈悲なことをいうようではあるけれど、やなせ宿は名張地区の再生になんの効果も見込めない施設である。少なくとも現時点では、そのように判断せざるをえない。そして名張地区の疲弊衰退は、いよいよ深刻の度を深めている。かつての中心市街地が見る影もなくなっているのは全国に共通した傾向で、これといった特効薬などどこにもなく、いたしかたのないところだというしかないのかもしれないけれど、それでもなんとかならんものかという気はする。

昨年12月10日の月曜日、地域の名門、三重県立名張高等学校の教え子をひきつれて名張市役所を訪れ、校外学習をおこなった。名張まちなか再生プラン関係セクションのスタッフに事前にお願いし、市議会開会中だったというのに無理を聞いていただいて、名張まちなかの現状と展望、みたいなことを生徒たちに説明していただいたのである。そのときはじめて知ったのだが、名張市内十四地区のうち、名張地区すなわち名張まちなかは、高齢化率でいえば堂々第二位にランクインしているという。

衰微したとはいえ名張まちなかである。旧名張町である。名張町役場もあれば名張市役所もあった土地である。八日戎ともなれば近郷近在から善男善女がつめかけてきたまちである。それが高齢化率第二位なのである。ちなみに第一位は国津地区で、名張市南部の山間に位置する旧国津村の高齢化率が高いのはうなずける話だが、国津以外の旧村部をおさえ、名張まちなかの高齢化がそこまで進行しているとは気づかなかった。聞いていささかのショックを受けた。

いささかのショックを受けたそのあとで、そんなところにハコモノひとつおっ建てるだけで、そんなことで名張まちなかの再生とやらが進むと本気で考えていたのかと、いまさらながらあきれたり驚いたりされた次第であった。特効薬などどこにもないかつての中心市街地の再生を、それでも真剣に考えて何かしらの手を打つのは必要なことだろう。重要なことだろう。だがその再生は、これまでにもしつこく主張してきたことなれど、あくまでも生活の場として再生させるということであるべきで、観光だの交流だのといった文脈だけで語ることには無理があるのではないか。あるのではないか、というよりも、無理がありまくりなのである。

名張市役所の校外学習を終えて、名張高校にむかう帰り道でのことである。生徒たちの会話を聞くともなしに聞いていると、談たまたま細川邸のことにおよんだ。市役所では細川邸の整備についても説明を受けたのだが、あんなとこに何かつくっても、人が集まるわけないやん、とか、あんなん絶対、税金の無駄づかいやで、とか、そういったあたりが高校生の生の声、忌憚のない意見であった。むろんこちらから水をむけた話題ではなく、ましてふだんの授業中に名張まちなか再生事業批判を吹きこんでいるというわけでもない。細川邸の整備事業は結局のところ、高校生に一瞥で本質を見抜かれてしまうような、そんな程度のものでしかなかったということなのである。

だからまあ、名張地区既成市街地再生計画策定委員会とか、あるいは名張まちなか再生委員会とか、そういう組織を結成するにあたっては、いろいろと役職をおもちのみなさんだけを集めてこと足れりとするのではなく、ごくふつうの高校生にも加わってもらっておればよかったのではないかと愚考される次第である。関係当局には、ぜひとも今後の参考としていただきたいものである。

とはいえ、いままで述べたのはあくまでも現時点での話である。現時点では望まれることなく生まれてくる子というしかないやなせ宿であるが、毎日新聞の記事に記されていたとおり、「今後、市民らで作る委員会で協議を続ける」ことになっているのである。この子の未来は名張まちなか再生委員会の双肩にかかっているのである。関係各位には、いっそうの奮励努力を期待したいものである。無理か。無理かよ。無理であろうな。

粘着さんはきょうもお休みらしい。
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