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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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江戸川乱歩年譜集成

昭和4年●1929 昭和6年●1931

 

昭和五年(一九三〇)

 

年齢:三十五歳→三十六歳、数え年三十七歳

住居:東京市外戸塚町源兵衛一七九番地

 

□探偵小説四十年:細目□

虚名大いにあがる【昭和五年度】

昭和五年度の主な出来事

上山草人

渡辺温

コナン・ドイルの死

虚名大いにあがる

「吸血鬼」

代作二冊

探偵小説流行の余波

 

一月一日(水)

□雑誌□「朝日」新年号(第二巻第一号)の奥付発行日。「孤島の鬼」第十三回が掲載された。

□雑誌□「講談倶楽部」新年号(第二十巻第一号)の奥付発行日。「蜘蛛男」第六回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」新年号(第三十六巻第一号)の奥付発行日。「猟奇の果」第一回が掲載された。連載は十二月まで。

 

一月ごろ

アメリカから帰朝した上山草人が訪ねてきて、探偵映画の台本執筆を依頼されたが、断った。[探偵小説四十年 上山草人/昭和28年6月]

《【一月】(金解禁、浜口内閣のデフレーション政策)》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

《【一月】(行李詰死体、清作事件起る)》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

《【一月】このころ大蘇芳年の血の錦絵を蒐集す》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

二月一日(土)

□雑誌□「朝日」二月号(第二巻第二号)の奥付発行日。「孤島の鬼」第十四回が掲載され、完結。

□雑誌□「講談倶楽部」二月号(第二十巻第二号)の奥付発行日。「蜘蛛男」第七回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」二月号(第三十六巻第二号)の奥付発行日。「猟奇の果」第二回が掲載された。

 

二月十日(月)

渡辺温が兵庫県西宮市夙川の踏切で乗っていた自動車の鉄道事故により死去。

《【二月】渡辺温君、「新青年」編集部員として原稿催促のため谷崎潤一郎氏を訪問の帰途、阪神沿線「夙川」の踏切にて渡辺君の自動車、汽車にはねられ即死す》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

三月一日(土)

□雑誌□「講談倶楽部」三月号(第二十巻第三号)の奥付発行日。「蜘蛛男」第八回が掲載された。

□雑誌□「新青年」三月号(第十一巻第四号)の奥付発行日。上山草人、藤原義江との座談会「われらの三人、探偵映画座談会」が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」三月号(第三十六巻第三号)の奥付発行日。「猟奇の果」第三回が掲載された。

 

三月十六日(日)

「テトラガミイ」を脱稿。[初出末尾]

 

上山草人が鎌倉か箱根の料亭で開いた会合に出席。久米正雄、近藤経一、北村小松、松竹の六車修ら十一人が顔を合わせたが、うやむやのうちに散会した。[探偵小説四十年 上山草人/昭和28年6月]

《【三月】米映画界に大人気を博せる上山草人氏、この年の初め(あるいは前年末か)帰朝、一月ごろ私の家に来訪、探偵映画につき相談を受く。松竹映画主催の相談会にも列し、又「新青年」は三月号に上山草人、藤原義江両氏と私との座談会記事をのせた》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

四月一日(火)

□雑誌□「講談倶楽部」四月号(第二十巻第四号)の奥付発行日。「蜘蛛男」第九回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」四月号(第三十六巻第四号)の奥付発行日。「猟奇の果」第四回が掲載された。

□雑誌□「猟奇」四月号(第三年第三輯)の奥付発行日。「夢野久作氏」が掲載された。

 

四月十日(木)

□書籍□『名探偵明智小五郎』の奥付発行日。先進社から「大衆文庫」第五巻として出版された。

 

五月一日(木)

□雑誌□「講談倶楽部」五月号(第二十巻第五号)の奥付発行日。「蜘蛛男」第十回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」五月号(第三十六巻第五号)の奥付発行日。「猟奇の果」第五回が掲載された。

□雑誌□「漫談」五月号(第一巻第三号)の奥付発行日。「テトラガミイ」が掲載された。

 

五月十五日(木)

□書籍□『首の綱』の奥付発行日。春陽堂から「探偵小説全集」第十八巻として出版され、ガボリオ「首の綱」などの翻訳を担当した。

翻訳は代訳で、誰が代訳したのかも知らなかった。[探偵小説四十年 探偵小説出版最盛の年/昭和28年3月]

 

五月十八日(日)

□書籍□『孤島の鬼』の奥付発行日。改造社から出版された。

 

六月一日(日)

□雑誌□「講談倶楽部」六月号(第二十巻第六号)の奥付発行日。「蜘蛛男」第十一回が掲載され、完結。

□雑誌□「文芸倶楽部」六月号(第三十六巻第六号)の奥付発行日。「猟奇の果」第六回が掲載された。

 

六月三日(火)

□書籍□文芸家協会編『大衆文学集 第三集』の奥付発行日。新潮社から出版され、「押絵と旅する男」が収録された。

 

七月一日(火)

□雑誌□「講談倶楽部」七月号(第二十巻第七号)の奥付発行日。「魔術師」第一回が掲載された。連載は翌年六月まで。

□雑誌□「文芸倶楽部」七月号(第三十六巻第七号)の奥付発行日。「猟奇の果」を「白蝙蝠」と改題し、第七回が掲載された。

 

七月三日(木)

□新聞□「大阪朝日新聞」に「見えぬ兇器」が掲載された。

 

七月七日(月)

コナン・ドイルが死去。「東京日日新聞」「時事新報」「国民新聞」「報知新聞」から談話を求められ、八日付紙面に掲載された。[探偵小説四十年 コナン・ドイルの死/昭和28年7月]

《【七月】七日、コナン・ドイル死す。同月十五日JOAKよりドイル回顧放送をなす》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

七月十五日(火)

午後七時二十五分からのラジオ「趣味講座」でコナン・ドイルについて話した。[探偵小説四十年 コナン・ドイルの死/昭和28年3月][貼雑年譜]

□書籍□『恐怖の谷・妖犬』の奥付発行日。平凡社から「世界探偵小説全集」第一巻として出版され、翻訳を担当したが、井上勝喜による代訳だった。

前年九月の第二巻同様、大阪から探偵小説好きの旧友を呼び寄せて代訳させた。[探偵小説四十年 探偵小説出版最盛の年/昭和28年3月]

 

八月一日(金)

□雑誌□「講談倶楽部」八月号(第二十巻第八号)の奥付発行日。「魔術師」第二回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」八月号(第三十六巻第八号)の奥付発行日。「白蝙蝠」第八回が掲載された。

 

八月

《【八月】九月号の「新青年」に連作「江川蘭子」第一回を書く。この題名より浅草にて旗上げせるエノケン一座に江川蘭子と称する踊り子生れ、又その後、松竹歌劇に江戸川蘭子現わる》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

九月一日(月)

□雑誌□「キング」九月号(第六巻第九号)の奥付発行日。「黄金仮面」第一回が掲載された。連載は翌年十月まで。

□雑誌□「講談倶楽部」九月号(第二十巻第九号)の奥付発行日。「魔術師」第三回が掲載された。

□雑誌□「新青年」九月号(第十一巻第十二号)の奥付発行日。連作「江川蘭子」第一回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」九月号(第三十六巻第十号)の奥付発行日。「白蝙蝠」第九回が掲載された。

 

九月二十七日(土)

□新聞□「報知新聞」夕刊に「吸血鬼」第一回が掲載された。連載は翌年三月まで。

この年、講談社が報知新聞を買収し、社長の野間清治が経営に乗り出したが、夏ごろ、野間が「報知新聞」夕刊への連載を希望しているとして講談社から依頼があった。断ったが、再三再四、鄭重な依頼があったため引き受けた。[探偵小説四十年 「吸血鬼」/昭和28年7月]

《【九月】より半年、報知新聞夕刊に「吸血鬼」を連載》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

十月一日(水)

□雑誌□「キング」十月号(第六巻第十号)の奥付発行日。「黄金仮面」第二回が掲載された。

□雑誌□「講談倶楽部」十月号(第二十巻第十号)の奥付発行日。「魔術師」第四回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」十月号(第三十六巻第十一号)の奥付発行日。「白蝙蝠」第十回が掲載された。

 

十月二十日(月)

□書籍□『蜘蛛男』の奥付発行日。大日本雄弁会講談社から出版された。

《【十月】講談社より「蜘蛛男」出版、単行本として最も出版部数多し》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

十月

□新聞□「報知新聞」夕刊に「吸血鬼」を連載。

 

十一月一日(土)

□雑誌□「キング」十一月号(第六巻第十一号)の奥付発行日。「黄金仮面」第三回が掲載された。

□雑誌□「講談倶楽部」十一月号(第二十巻第十一号)の奥付発行日。「魔術師」第五回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」十一月号(第三十六巻第十二号)の奥付発行日。「白蝙蝠」第十一回が掲載された。

□雑誌□「モダン日本」十一月号(第一巻第二号)の奥付発行日。「1頁自伝」が掲載された。

 

十一月十五日(土)

□書籍□『変態殺人篇』の奥付発行日。天人社から「世界犯罪叢書」第二巻として出版された。

大阪時事新報記者時代の先輩から、新しい出版社を創業するからと全集への参加を依頼された。断りきれず、代作でもいいという了解をとりつけて承諾し、井上勝喜に代作させた。[探偵小説四十年 代作二冊/昭和28年7月、8月]

 

十一月二十六日(水)

□新聞□「報知新聞」に「名士の家庭訪問記」の江戸川乱歩篇が掲載された。ある日訪ねてきた大阪毎日新聞広告部勤務時代の友人が無断で探訪記をまとめ、スマイルという目薬の広告として記事にした。これに懲り、広告に名前を出すことはいっさい断るようになった。[探偵小説四十年 探偵小説流行の余波/昭和28年8月][貼雑年譜]

《【十一月】私の名、目薬の不快なる記事広告に使用さる》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

十一月

□新聞□「報知新聞」夕刊に「吸血鬼」を連載。

 

十二月一日(月)

□雑誌□「キング」十二月号(第六巻第十二号)の奥付発行日。「黄金仮面」第四回が掲載された。

□雑誌□「講談倶楽部」十二月号(第二十巻第十二号)の奥付発行日。「魔術師」第六回が掲載された。

□雑誌□「文芸倶楽部」十月号(第三十六巻第十三号)の奥付発行日。「白蝙蝠」第十二回が掲載され、完結。

 

十二月十日(水

「旧探偵小説時代は過去った」を脱稿。[初出末尾]

 

十二月十五日(月)

□書籍□『Unu Bileto』の奥付発行日。エスペラント研究社から「一枚の切符」のエスペラント語訳として出版された。

《【十二月】「一枚の切符」エスペラント訳出版さる》[探偵小説四十年 昭和五年度の主な出来事/昭和28年6月]

 

十二月二十三日(火)

□書籍□『女怪』の奥付発行日。平凡社から「世界猟奇全集」第三巻として出版され、翻訳を担当したが、代訳だった。

全集の企画に関わっていた本位田準一から依頼を受け、訳者として名前を貸した。代訳者も知らず、訳文も読まなかった。[探偵小説四十年 代作二冊/昭和28年7月、8月]

 

十二月

□新聞□「報知新聞」夕刊に「吸血鬼」を連載。

 

[2012年7月25日]

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