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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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きのうにつづいて、桝田医院第二病棟跡地に建てられた「江戸川乱歩生誕地碑広場」の案内板を手がかりに、名張市および名張市教育委員会を並び叩いてやるつもりであったのだが、予定を変更し、名張まちなか再生委員会からのお知らせを披露する。いってみればメッセンジャーである。

名張市公式サイト:名張市旧細川邸やなせ宿「ロゴマーク」募集要項

もう笑うしかない。笑いながら思いきり脱力してしまう。思わず瞳孔が開きっぱなしになってしまいそうである。

ばーか。ロゴマークなんか募集してる場合かよ。そんなことより先にやるべきことがあるだろうが。やなせ宿でいったい何をするつもりだ。

4月3日付朝日新聞によれば、こうである。

「地域の案内パンフレットや散策地図を置き、旧市街地を訪れた人が情報集めや休憩ができる場にする」

「史料の展示などに活用する」

「展覧会や催しを開く団体や個人に有料で部屋を貸し出す」

4月12日付YOUによれば、こうである。

「観光客と住民の交流スペース、市民らが腕を振るう『ワンデイシェフ』などオープン以降にもさまざまな企画が練られているが、いまだに具体化されていない」

な。だからロゴマークなんか募集してる場合かよっつってんだろーが。YOUの場合は見出しからして、「総工費1億円 名張の観光交流施設『やなせ宿』どうなる?何する?」なんだぞ。

何する? との問いかけにたいして、ロゴマーク募集しまーす、ときちんと返事ができたのは、文字どおり打てば響くようなレスポンスである、おおいによろしい、よくやったと褒めてやりたいところだけれど、まったく関係のないところを響かせてんじゃねーやばーか。

いやはや。やれやれ。ほんとに腰が抜けそうになる。瞳孔ほぼ全開でばーかとかいって笑っているうち、しかし、だんだんと怒りがこみあげてきた。猛烈にむかっ腹が立ってきた。もうとめられない。誰にもとめられない。怒り憤りのおもむくまま、名張市にメールを送信してしまった。送信先は名張市都市環境部市街地整備室内「やなせ宿ロゴマーク募集」係のアドレス、すなわちshigaichi@city.nabari.mie.jp。件名は「やなせ宿についておききしますッ」。

文面はこんなの。

   
おはようございますッ。ちょっとおききしますッ。やなせ宿のことですがッ、やなせ宿を利用するための申請はッ、どうすればいいのでしょうかッ。またッ、申請はいつからッ、うけつけてもらえるのでしょうかッ。やなせ宿を利用してッ、講演会をッ、ひらきたいとッ、考えておりますッ。四週ぐらい連続でッ、毎週土曜日にッ、と考えておりますッ。テーマはッ、こんなかんじですッ。

第一週「名張の歴史をしっとるか」
第二週「なにがやなせ宿だばーか」
第三週「乱歩はどこへきえたのか」
第四週「へたれ責任者でてこんか」

かで脚韻をッ、踏んでみましたッ。講演会ッ、といいましたがッ、「へたれ責任者でてこんか」というのはッ、シンポジウムですッ。名張まちなか再生委員会のえらい人とかッ、名張市のえらい人とかッ、いっぱい集まってもらってッ、なかよくおはなしをしたいなッ。

それからッ、講演をやろうと思ってもッ、よくわからないことがありますのでッ、ついでにッ、そのわからない点もッ、おしえてくださいッ。細川邸はッ、名張まちなか再生プランではッ、歴史資料館として整備されるということにッ、なっていましたがッ、観光交流施設のッ、やなせ宿にッ、なってしまいましたッ。どうして変更されたのかッ、理由や経緯などッ、市民にはッ、いっさいなにもッ、しらされていませんッ。そうですねッ。そこでッ、どうしてこんなことになったのかッ、その点についてッ、おしえてくださいッ。

以上ッ、二点ですッ。メールでのお返事ッ、おまちしていますッ。よろしくッ、おねがいしますッ。さようならッ。

2008/04/22

なかなか元気があってよろしい。

それにしても、この名張市公式サイトのロゴマーク募集記事を読むかぎり、やなせ宿からは乱歩が完全に消えてしまったとおぼしい。あらためてその事実が知られる。

引用。

   
【募集概要】
旧細川邸やなせ宿は、名張川が大きく蛇行したところに位置しています。この付近は、鮎を取るための簗がたくさん設けられたことから、平安時代から簗瀬(やなせ)と称されており、また、江戸時代には初瀬街道の宿場として栄え「名張八宿」と呼ばれていました。風土に由来した名張の旧称を生かすとともに、人々が集う場となることを目指して、旧細川邸の名称を「やなせ宿」としました。
この施設の、今後の発展を期待したシンボルとなる「ロゴマーク」を募集します。「ロゴマーク」は、施設の公式ロゴとして、ホームページ・ポスター・チラシなど、様々な用途に使用することを計画しています。

乱歩のらの字も見当たらない。川がどうの街道がこうのという説明もいいけれど、やなせ宿のある新町をいちばん手っ取り早く、わかりやすく紹介しようと思ったら、江戸川乱歩が生まれた町ですといえばいいのである。それがもっとも、きょうびのことばでいえば発信力のある紹介なのである。しかし、乱歩のらの字も見当たらない。これはもう完全に、意図的な黙殺であり隠蔽であるとしか考えられない。乱歩は抹殺されてしまったのである。

じつに困ったものである。いまさら何を説明したところで、あの名張まちなか再生委員会が耳を貸すはずもなかろうが、というか、説明を理解できるかどうかもあやしいものであろうが、たとえば、平成17・2005年12月7日付朝日新聞のコラム「青鉛筆」に、こんなことが記されていた。いうまでもなく、伊賀版の記事ではない。

   
▽推理小説の生みの親、江戸川乱歩の生誕地である三重県名張市は5日、古今東西の推理小説を一堂に集めた「ミステリー文庫」を設置する方針を明らかにした。
▽同市は、乱歩に関する街おこし事業が盛ん。08年までに完成させる予定で、市立図書館の乱歩関係の蔵書約千冊を移し、寄贈も受け付けるという。
▽「全国の推理小説ファンの集まる場に」と同市。しかし、具体的な運営方法や設置場所は未定だ。行政側の思惑通りにいくか、それもまた「ミステリー」。

大阪本社発行版に掲載されたコラムである。名古屋本社発行版ではおなじ日、コラムではなく社会面の記事として、ほぼ同内容のことが報じられていた。タイトルは「世界の推理小説一堂に 乱歩生誕地にミステリー文庫」。

むろんこの時点では、ミステリー文庫などいまだ海のものとも山のものともつかぬ構想であった。だが、その程度の構想であっても、朝日のコラムや社会面の記事にとりあげられるのである。乱歩という名前が秘めているところの、いわゆる発信力のなせるわざなのである。それを抹殺してどうする。やなせ宿に案内パンフレット置いてまーす、とか、やなせ宿でワンデイシェフやってまーす、とか、そんなこといってみたって朝日のコラムはとりあげてなんかくれないぞ。こら聞いておるのか名張まちなか再生委員会、というか、やなせ宿私物化委員会。

新町に観光交流施設を整備するというのであれば、それを乱歩に関連づけるのはあたりまえの話である。あえて損得で考えれば、乱歩という素材を無視してしまうのは損である。たとえ観光という分野であっても、乱歩という名前の発信力はおおいに期待できるはずなのである。それがどうして消えてしまうのか。乱歩の名前がどうして消されてしまうのか。たとえば名張市議会の議事録を読んでみても、まちなか再生に乱歩という素材を活用すべきであるということは、おおげさにいえば共通認識として存在しているではないか。その素材を、名張まちなか再生委員会はどうして抹殺してしまうのか。名張のまちなかに残されている貴重な可能性の芽を、どうして踏みつぶしてしまうのか。

むろん、やなせ宿を乱歩に関連づけるべきではない、という考えがあってもふしぎではない。それを否定するつもりはない。なにごとであれ、意見のちがいは存在していて当然であるし、ことなった意見をもつ人間が正当な批判を応酬し、着地点を見いだしてゆくのはあたりまえのことである。ただし名張市においては、すくなくとも細川邸整備事業をみるかぎりでは、ことなった意見に耳を傾けるだの、正当な批判をやりとりするだの、そんなシーンはまったくみられなかった。その意味において、名張市はもう死んでいる。完全に死んではいないにしても、脳死状態が長くつづいている。

それとは別に、つまり、やなせ宿と乱歩を関連づけるかどうかという問題とは別に、それ以前の問題として、名張まちなか再生委員会はいったいどうして、ここまでのさばっているのか、はばかっているのか、場所ふさぎをしているのか、という問題がある。無能力はすでに歴然としている。乱歩という素材を活用できないという一点だけをとっても、驚くばかりに無能力である。そんな委員会とどうして名張市は、結託をつづけ、癒着をつづけ、市民を無視した専横を容認放置しつづけるのか。

名張市職員諸君だって、名張まちなか再生委員会の手先に甘んじて、ロゴマークの募集なんぞにこきつかわれるのは本意ではないのではないか。それとも市職員諸君には、あの委員会の抱えている重大な問題が、まったくみえていないというのか。気がついていないというのか。そんなことはないはずである。いやいや、これは酷であろう。あまりにも酷であろう。名張まちなか再生委員会の専横にかんして、市職員諸君を責めるのはなんとも酷な話であろう。

名張市公式サイト:名張市 市長への手紙

たいして意味はない。ちょっとリンクしてみたかっただけである。
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