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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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いや鬱である鬱である。正真正銘の鬱なのであるが、ちゃんと葬送はしなければ、ということで便法を思いついた。名張市公式サイトにある市議会の会議録にもとづいて、名張市における乱歩なるものの変遷をあとづけておくことにする。要するに、「乱歩」という語で検索をかけてみるだけの話なのであるが。

市議会といえば、名張市の3月定例会が3日に開会し、市の公式サイトに新年度の施政方針が掲載された。

名張市公式サイト:施政方針 平成20年3月

細川邸改めやなせ宿にかんする記述を引いておく。

   
まちなか再生につきましては、本年6月にオープン予定の旧細川邸「やなせ宿」は、市民をはじめ、多くの来訪者の交流拠点施設として、地域の皆様方が主体となって、多様な事業が展開されるよう大いに期待をいたしているところでございます。また、本事業につきましては平成20年度も引き続き、城下川沿いの道路修景、太鼓門散策道整備、桝田医院第2病棟の跡地整備などに取り組んでまいります。

こんなことでもいっておくしかないのであろうが、少しは反省というものがあったのかな。しょせんきれいごとに終始するだけの施政方針で、まさか細川邸の整備事業はみごとなまでの大失敗でございました、てへっ、そこらのうすらばか何十人と集めたところでなんの役にも立ちませんでした、てへっ、てへっ、などと正直なところを開陳するのはできない相談であるにしても、今後ということもあるのだから、ちっとは反省というものをしてもらわなければ困るのである。

ついでだから、反省材料として、以前にも引いたものだが、昨年10月に提出された名張市考査委員会の事務事業評価報告書にみえる評価を引いてみる。

名張市公式サイト:平成19年度外部評価結果
名張市公式サイト:考査委員会事務事業評価報告書(pdf)

   
シートNO.
4022

事務事業名
中心市街地活性化事業

総合評価
継続(事務改善)

主な意見
・「まちなか再生委員会」の位置づけが不明確であり、責任主体の明確化が必要である。
・指定管理者の導入は公募を前提とすべきであり、NPO法人への特命は望ましくない。
・計画が楽観論過ぎるので、組織、権利関係を明確にするため、条例の担保が必要である。
・ワークショップとしての位置づけを明確にし、事業決定権は市長にあることを明らかにする必要がある。

こうした評価は新年度の施政方針に、いささかなりとも反映されているのであろうか。そんなことはまったくないようにみえる。名張まちなか再生委員会の位置づけはあいまいなままであり、行政は主体性放棄の一点張りである。反省なんて少しもしておらんのではないか。

さらについでである。去年の施政方針から引いてみる。

名張市公式サイト:施政方針 平成19年2月

   
「名張まちなか再生事業」については、市民・行政・大学の三者が連携を行い、細川邸を改修し、まちなかの交流拠点として活用を図るとともに、江戸川乱歩生誕地碑のある桝田医院元第2病棟跡地利用に向けた取組みや、名張地区の名所を紹介する案内板設置の取組みを進めます。

「市民・行政・大学」の三位一体はどうなったか。市民といったって、いまや細川邸改めやなせ宿に直接かかわっているのはごくわずかな数の市民である。市民という言葉が有している普遍性など、もはやどこにも認められぬ連中である。行政となるとこれはもう、先述のごとく一から十まで主体性放棄の一点張りを貫き通している。そして大学というのは、これはどの大学のことであるのか。三重大学か、皇學館大学か。いずれにしても、大学の影などどこにも見あたらぬではないか。ただしまあ、中学生がつくった壁新聞のような、などと表現してしまうのは中学生諸君にほんとに申しわけないのであるが、案内板だけはなんとか年度内に設置されるようである。

ついでじゃついでじゃ。おととしの施政方針。

名張市公式サイト:施政方針 平成18年3月

   
活気にあふれる「元気先進都市」を目指す主な取組として、中央西土地区画整理事業や公共下水道事業、また、名張地区においては、歴史・文化の活用、まちなか研究室や学生サロンなど地域住民との活発な交流や活動を推進し、名張市の顔となる中心市街地の活性化に取り組みます。

もう何もいう気がしないから、さらにそのまえの年にさかのぼる。

名張市公式サイト:施政方針 平成17年3月

   
また、市民との協働により策定しました名張地区既成市街地再生計画「名張まちなか再生プラン」を基本に、自然や歴史、文化などの地域資源を積極的に活用した魅力あるまちづくりを目指し、市民や事業者などの参加と連携のもと、計画的に事業を推進してまいります。

平成17・2005年3月の時点では、細川邸は公設民営の歴史資料館として整備されることが決まっていた。それが名張まちなか再生プランの核であった。名張市議会が承認を与えたのは、あくまでも細川邸を歴史資料館にする構想が盛りこまれた名張まちなか再生プランである。それがいつのまにかあっさりとくつがえされ、細川邸は無駄に立派な公衆便所つきの名張地区第二公民館になってしまったのである。名張市議会のみなさんはこのあたり、いったいどのようにお考えなのであろうか。あろうか、なんて尋ねてみたってしかたねーのか。

まえおきが長くなった。名張市公式サイトに掲載された市議会会議録の話題に移る。

名張市公式サイト:名張市議会会議録

掲載されたうち最古の会議録は、平成6・1994年のそれである。ときあたかも、生誕百年を迎えて乱歩ブームが起きていたころのことである。

それでは、平成6・1994年第263回(9月)定例会。

市議会議員の質問。

   
P.239 ◆ 議員(竹内秀夫君)

次に、教育関係の予算の中で図書館関係でありますけども、図書の購入の費用としての郷土、それから乱歩資料の購入として補正が200万円計上されております。この資料については、巷間に散らばっております資料を購入するところの予算と見受けるわけでございますが、特に乱歩の資料に関しましてお尋ねをしておきたいのは、名張市が乱歩資料館を充実していくと、これからも充実を図っていって、乱歩生誕の地としての、名張としての資料館を充実していくという場合に、今後その関係資料を集める場合に、特に対策を必要とされて構想をお持ちなのかどうか、この際お尋ねをしておきたいと思うわけであります。

えらいものである。当時はまだ、名張市にも財政的余裕というものがあったのである。乱歩資料を含む郷土資料の購入費に、なんと二百万円の補正予算を組む余裕があったのである。どこの話かとぞ思う。

名張市教育委員会の答弁。

   
P.240 ◎ 教育長(梅田馨君)

◎教育長(梅田馨君) 江戸川乱歩先生の図書購入については、名張市として最大の努力をして、名張は乱歩の発祥の地として恥じない、また誇れるような収集をしたいというふうなことで頑張っているところでございまして、過去いろいろとお骨折りをいただいておるおかげで、現在約400点近く、もちろん遺品、写真、著書等を含めてでございますが、そのぐらいの点数を担保さしていただいているところでございます。現状におきましては、いつ何どきこの先生の資料が本屋さん等に出回るかわからん状況の中で、東京の神田の本屋さん街等で、過去にいろいろと名張がこういう活動をしておるということをお願いしていること等がありまして、出たらすぐに図書館の方に通報をいただいて、即座にその品物を抑えさしていただいているという状況でございまして、できるだけ多くそういうふうなアンテナを全国に向けて、名張市はやはり乱歩に力を入れているんだということをPRしているのが現状でございます。かなり、現状、東京のそういう重立った本屋さんでは、名張はこれにかかわって力を入れているということを認識していただいていると見えまして、ごく最近等、いつ何どきかわかりませんが、通報をいただいて購入をさしていただいておるわけでございまして、現在もそういうことで補正予算でお願いしているのは、実は既決の予算を、一般図書の予算を購入さしていただいて、先食いさしていただいておる関係上、それをフォローする意味で補正予算を財政当局にお願いして対応をお願いしたわけでございます。そのような状態で、今後も一層の収集の努力をしてまいりたいと、かように考えております。

名張市教育委員会などというのはむろんいまでもばかなのだが、当時からばかだったのだということである。この答弁では、なんのために資料を収集しているのかがわからない。資料収集が目的化しているのである。収集した資料をどう活用するのかということがまったく考えられていない。どうやら自慢するための資料であるらしい。名張市は頑張っておりますという売名のための資料であるらしい。ばかかこら低能。

しかもなさけないことに、そうした資料の収集は東京の古書店まかせであったらしい。みずから乱歩の資料にかんする知識を身につけようとするのが先決であろう。乱歩作品を読み、乱歩がどういう作家であったかを知ることが先であろう。ところが、そういうことは何もせんわけである。すべてあなたまかせなのである。あなーたっとー呼べーばー、あほーかっとー答ーえるー。まさしくあほなのである。それで恰好だけはつけたいのである。名張市は頑張っておりますと誇りたいのである。誉められたいのである。ばーか。そんな低能自治体だれが誉めるか。

市議会議員の再質問。

   
P.242 ◆ 議員(竹内秀夫君)

次に、乱歩の資料の問題でございますが、一般に巷間流れております資料をピックアップして少しでも蓄積していくという、これも大変大事なことでありましょう。それはそれとして、これからも鋭意ご努力をお願いし、資料の充実を図っていただきたいと思いますし、やはり、名張市も一つの看板といいましょうか、名張としての重要ポイントとして乱歩先生というものを考えるならば、それに伴うところの予算も十分対応していかなければいけないものであろうと考えております。ただ、問題は、江戸川乱歩先生のところのご遺族の方が保有する資料、これがかなりまとまった資料をお持ちのように聞いております。その資料を名張市がぜひちょうだいするということも大きな課題ではないかと思うわけです。その点について、関係者からもそのことの重要であることも聞かされたのを記憶しておるわけでございますが、その点に対してどういうふうにこれから名張市として対応していこうと考えておられるのか。やはり資料室というような規模ではなくて、江戸川乱歩先生の資料館というようなものを別途につくられるとか、そういったような根本的な見直しというようなものもこれからの受け皿としては必要なのではないかと思うわけです。その点について、教育委員会、また市長の方でも何かそれに対しての構想といいましょうか、お考えがありましたら、ぜひこの際お聞かせをいただきたいと思います。

ハコモノの話である。ただし、これは無理からぬところであろう。当時、乱歩の資料が将来にわたって散逸をまぬがれ、信のおける機関や団体などの手で恒久的に保管されるという保証はどこにもなかった。だからこの時点では、名張市が乱歩関連資料を買いあさり、資料の散逸をわずかでも防ぐ役割を買って出ることには、それなりの正当性が認められたはずである。

ようやく調子が出てきた。えーいッ。うすらばかども校庭にならばせて順に張り倒してやる勢いで、あすにつづくぞ。
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