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三重県名張市のかつての中心地、旧名張町界隈とその周辺をめぐる雑多なアーカイブ。
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名張まちなか再生委員会ええじゃないか臨時総会の話題を中断し、ノンバーバル映画「鬼 The Oni」にかんする報告となる。

昨日、名張公民館の和室で、映画に使用する謡曲の録音がおこなわれた。1月12日の撮影における能の所作指導にひきつづき、名張能楽振興会のご協力をたまわった。たとえおなじ曲でも流派がことなると、うたいかたに差が出てくるものらしい。録音は観世流で進められた。観世流の会派に所属する七人のみなさんに、マイクのまえで「鉄輪」を披露していただいた。通常であれば、前列四人、後列三人、という二列横隊になるらしいところ、全員の声が均等に録音できるように、という録音スタッフの意向により、マイクを囲んで七人が車座になるフォーメーションを採用した。首尾は上々。録音後にイヤホンでお聴きいただいたところ、すごくよく録れている、と会員のみなさんもお喜びであった。

録音中は、いきなりふぁーっくしょん、くっそーッ、などとくしゃみなんかしたりしたらえらいことだと思い、和室の外に出て煙草を喫いながら、屋外にまで洩れ聞こえてくる謡曲に耳を傾けていたのだが、これがまた予想以上の迫力で、映画のなかにどんなぐあいに生かされるのか、おおいに期待されるところとなった。

「鉄輪」全曲をうたうには、二十五分ほどの時間が必要になるらしい。きのうの録音では、時間の無駄をはぶくため、脚本にある詞章だけをうたっていただいた。詞章を脚本から引いておく。底本は新潮日本古典集成『謡曲集 上』。

〈言ふより早く色変はり 言ふより早く色変はり 気色変じて今までは 美女の形と見えつる 緑の髪は空さまに 立つや黒雲の 雨降り風となるかみも 思ふ仲をば裂けられし 恨みの鬼となつて 人に思ひ知らせん 憂き人に思ひ知らせん〉

〈悪しかれと 思はぬ山の峰にだに 思はぬ山の峰にだに 人のなげきは生ふなるに いはんや年月 思ひに沈む恨みの数 積もつて執心の 鬼となるも理りや〉

〈いでいで命をとらん いでいで命をとらんと 笞を振り上げ後妻の 髪を手に絡まいて 打つやうつの山の 夢現とも分かざる憂き世に 因果は廻り合ひたり 今さらさこそ悔やしかるらめ さて懲りや思ひ知れ〉

〈ことさら恨めしき ことさら恨めしき あだし男を取つて行かんと 臥したる枕に立ち寄り見れば 恐ろしや御幣に 三十番神ましまして 魍魎鬼神は穢らはしや 出でよ出でよと責め給ふぞや〉

〈腹立ちや思う夫をば 取らで剰さへ神々の 責めを蒙る悪鬼の神通 通力自在の勢い絶えて 力もたよたよと 足弱車の廻り逢ふべき 時節を待つべしや まづこのたびは帰るべしと 言ふ声ばかりは定かに聞こえて 言ふ声ばかり 聞こえて姿は 目に見えぬ鬼とぞなりにける 目に見えぬ鬼となりにけり〉

これだけで、八分ほどになった。録音スタッフによれば、このうちの一分三十秒から二分程度が、映画のBGMとして使用されることになるという。

撮影スタッフが「鬼 The Oni」のダイエットバージョンを収録したDVDを持参してくれたので、録音が終わったあと、名張公民館ロビーの大型テレビで視聴した。九分五十五秒の作品を短縮して、ふたつのバージョンができあがっていた。百キロちかくもあった体重を、七十五キロと五十キロとに減量したふたつのバージョンである。五十キロバージョンとなると、およそ半分ということになる。ストーリーを説明するためのシーンが大幅に省略され、いきなりのトップギア、ストーリーが後景にしりぞいたかわりドラマが前景にせり出してくる、といったような印象であったが、これはこれで面白いものにしあがっていた。プロというのは、やはりたいしたものである。

といったような次第で、3月の沖縄国際映画祭2009に出品されるノンバーバル映画「鬼 The Oni」の名張市内における撮影ならびに録音は、きのうをもってすべて終了した。ご協力をかたじけなくした、というよりは、ひとかたならぬお世話になった、というよりは、もういいだけご迷惑をおかけしまくったすべてのみなさんに、あらためて深甚なる謝意を表する次第である。

ここで、名張まちなか再生委員会ええじゃないか臨時総会の話題を中断したかわりに、名張まちなか再生委員会乱歩関連事業検討委員会の話題。案内のはがきから引いておく。

   
乱歩関連事業検討委員会の開催について

みだしの会議につきまして、下記のとおり開催させていただきますので、ご出席賜りますようお願い申し上げます。

日時:平成21年1月29日(木)19:00〜
場所:名張市役所4階 405会議室
議題:
1.乱歩関連事業(資料展示・記念事業)について
2.その他

あしたである。顔を出してこなければならない。内容については、ちんぷんかんぷんである。「資料展示」というのは、むろん乱歩関連資料のことであろうが、どこになにを展示するのか、さっぱりわからない。わからないものの、ちまちました小手先の資料展示なんかにかまけていないで、名張市が乱歩をいったいどうするのか、それを明確にすることがまず望まれる次第ではあるのだが、そんなことはとても無理であろう。無理無理、絶対に無理であろう。無理であることは百も承知でいるのだけれど、あしたの会議ではやはり、こつまらぬ資料展示なんかしてんじゃねーぞこら、みたいな主張を全面的に展開することになると思う。

もうひとつの「記念事業」というのは、もしかしたらあれであろうか、江戸川乱歩生誕地碑広場の完成を記念する事業のことであろうか。たぶんそうであろうな。そうとしか考えられぬ。笑わせてくれるではないか。片腹痛い、とはこのことであろう。さんざっぱらすったもんだしたそのあげく、できあがったのは淫祠邪教の聖地である。その記念事業をかますというのか。もちろん、最低限のセレモニーは必要である。市民に報告し、土地寄贈者をはじめとした関係者に感謝を捧げるための場は、いうまでもなく必要である。しかし、そのほかに記念事業を展開する、ということになると、もしかしたらあれではないのか、へたすると市民のなかから、そんなことしとる場合か、といった声も出てくるのではないのか。名張のまちがこんな状態だというのに、どこまでおめでたかったら気が済むのだおまいら、みたいな。

いずれにせよ、当方、名張まちなか再生委員会に加入したのは、あくまでも、名張まちなか再生委員会をぶっ壊すためである。叩きつぶしてやるためである。それがいまだに、ぶっ壊しも叩きつぶしもできていないのだから、これはもう不徳のいたすところだというしかないのであるけれど、それはそれとして、そういった事情なのだから、名張まちなか再生委員会に協力する気などまるでない。乱歩のことに関連して、名張市に協力する気もさらさらない。名張市長からじきじきに要請があれば、それはまあ考えてみてやらんでもないかな、といった程度の柔軟さはもちあわせているつもりでいるのだが、さていったい、どうなるのかな。
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